社長就任から2シーズンを闘い、明確な光明が見えてきた。
経営者としても、クラブ全体のトップとしても手応えは大きい。
そこに至るまでにクラブが取り組んできたプロセスについて、前田社長に話を聞いた。

インタビュー・文=細江克弥

ジェフが掲げる大義。

―― 結果的にプロセスの価値を高めることになった7連勝について、前田社長はシーズンを通じて「最後の最後に必ず結果に結びつく」と信じていたんですか?

前田焦ることはありませんでした。なぜなら、間近にプロセスを見ていましたから。人間集団ですからパラメータがあまりにも多岐にわたっていて、どこかで噛み合わせが狂うリスクは常にありました。ただ、これもやはり人間集団だからこそ、そしてウチの指揮官が“ああいう人”だからこそ、最後はやってくれるだろうなという気持ちのほうが強くて。

前田英之 代表取締役

―― ああいう人(笑)。

前田ビジネスにおける経営者に対しても、サッカーチームの監督に対しても、よく「ブレないことが大事」と言いますよね。改めて、それってホントだなと。変革期のリーダーは、現状に自分をフィットさせるのではなく、現状を変えることで自分にフィットさせることが求められる。ただそこには多大なエネルギーが必要だし、今年のチームに関して言えば監督自身が感じるフラストレーションもストレスもすごかったと思うんです。

でも、彼は目の前の問題や軋轢(あつれき)、葛藤から絶対に逃げない。うまくやろうともしない。ぶつかり合って分かり合おうとするだけで、これは高橋GMとも話していたんですが、今年1年、ずっと『金八先生』を観ているみたいでしたよ。総反発に始まり、ひとりずつ衝突し、最後は河原で殴り合って、それから抱き合うという(笑)。

―― 古き良き日本の教室物語が、チームを変えた。

前田そうそう。そこには、戦術ボードで分かり合う頭の理解を超えた“腹落ち感”があったと思うんです。時間はかかったけど、ひとりずつ“監督側”に落ちていって、最後に闘う集団と化して大きなエネルギーを持った。そうしたストーリーの背景に、監督の強い信念があったことは間違いないと思います。

前田英之 代表取締役

―― 個人的には、それ以外に必要なものなんてないと思ったりもします。前田社長がおっしゃるように、人間集団である以上。

前田そう思います。私はずっと組織のマネジメントを仕事としてきて、人間のシナジーを最大化する組織を研究してきました。軍隊に例えるなら、サッカーチームの監督と選手は、野戦に繰り出す将校と兵の関係に近い。私のようなフロントの人間は“政府”で、装備品を与えるけど現場に介入することはできません。戦場では、将校の判断の下で一糸乱(いっしみだ)れぬ戦いを展開しなければならないわけです。

そう考えると、指揮官として集団の士気を高める、規律を作る、互いに協力して目の前の敵を倒し、敵の屍(しかばね)を乗り越えてでも前に進んでいくという強い意志を共有するためには、やっぱり指揮官の強いパワーが大切だと思うんです。とはいえ戦争とは大義を実現するための手段なのですから、じゃあ、僕たち“政府”はこの戦争の大義を何と考えるのかと。そしてその大義を体現する戦闘指揮官に必要な素養は何なのかと。そこからチーム作りを始めて、結果的にフアン エスナイデルがやって来た。つまり、監督ありきのチームではなく、クラブの大義あっての監督であると。

―― クラブとしての大義があって、はじめて監督に求められる素養が決まる。

前田はい。高橋GMがヨーロッパで直接会ったのは10人以上。最後は私が会って、高橋GMとともに「彼に託そう」と決めました。だから、そうやって決めた以上、結果が出ないことに対する不安が全くなかったとは言いませんが、焦りはありませんでした。