結果が続かない、苦しい日々が続いている。
シーズン前半戦を終えて、白星はわずか「5」。順位は18位にまで沈んでいる。
それでも指揮官は言う。「今は我慢しなきゃいけない」
はっきりとした理由が、江尻篤彦の頭の中にある。

インタビュー・文=細江克弥

引いて構える相手をいかに崩すか

―― ただ、逆に難しさもある気がします。ジェフにいる選手たちは、確かにJ2リーグにおいては“比較的うまい”。でも、ある程度の経験を積んできたベテラン選手も多く、それぞれのサッカー観をチームのスタイルに寄せるのは簡単じゃない。もっと言えば、監督や選手の顔ぶれが変わっても、ピッチで浮き彫りになる課題はいつも同じですよね。

江尻おっしゃるとおりだと思います。じゃあ、大分がなぜ成功したかというと、やはり一度J3まで落ちて、どん底を経験して、新しいチームを作るために片野坂知宏監督に託してある程度の時間をかけた。それから、何色にも染まっていない若い選手を中心とした。チーム作りとはそういうもので、凝り固まった頭ばかりでは、新しいものは生まれにくいと思うんです。

そういう意味では、ウチには技術的には優れているけれど、はっきりとした色、個性、サッカー観を持つ選手が多いわけですよね。ただ、だからと言ってすべてをリセットするわけにはいかないし、そういう集団を、チームとして同じ色に変える作業も不可能とは思わない。今はそのための努力を続けている最中で、現実的には、秋から冬にかけて「1つになったね」と言われるようなチームになることを目指しているわけです。

そのために大切なのが、日々のトレーニングです。僕はこの部分に、対戦相手を分析するのと同じくらいものすごいエネルギーを使っている。選手たちになるべく考えさせる。攻守が一体化している。今はそういうことを辛抱強くやり続けて、信じて結果を待つしかないと思っています。

―― では、現実的な課題である「引いて構える相手を崩せない」についてはどのように考えていますか? 最近で言うと、0-0に終わった第17節の栃木SC戦がまさにそういうゲームでした。

江尻もしかしたら、試合を観ていた人は「なんでこのチームから点が取れないんだ」と思ったかもしれませんが、僕自身は簡単じゃないと最初から思っていました。今シーズンの栃木は、分析するほど点を取ることがいかに難しいかが分かる。実際、大宮アルディージャは10人の栃木を相手に最後まで点が取れませんでしたから、ああいうゲームになることは予想していました。

ただ、もちろんあの守備を打開する術を持っていなければ勝てないわけです。勝てなければ、順位も上がらない。そのために今の僕が考えているのは、チーム戦術の精度を上げることと同時に、やはり個人戦術の精度を上げることです。パスの質、パスをもらう動きの質、狭い空間でも前を向く技術、前を向いて仕掛けるまでの工夫、ビルドアップにおける最終ラインからのボールの持ち出し。最終的にはそういう部分が積み上がってこないと、強固な守備を作るチームを崩すのは難しい。

―― 必要なのは技術ですか? それとも勇気や自信ですか?

江尻どれも必要だけれど、あえて言うなら、自ら考えて、判断する力だと思っています。何度も言いますけれど、ジェフの選手たちはJ2の中では確かに技術レベルは高い。でも、自ら考えて、判断するという個人戦術のレベルは決して高くない。まずは、その部分を謙虚に受け止めなければいけないと思います。J2の中ではレベルが高いと言っても、やはりJ2の選手であるということですから。

ただ、もちろんそこは指導する僕自身がなんとかしなければならない部分でもあります。もっと意識的に上げなければならない部分だし、そこが上がらなければ“引いて構える相手”を簡単には崩せない。

江尻篤彦

―― 例えば、乾(貴哉)選手を3バックの一角として使う理由も、彼自身の個人戦術の向上を期待してのことですよね。

江尻もちろんそれ以外にもたくさんありますけれど、その1つの例ではありますよね。トレーニングを通じて乾の個人戦術がもうひと回り成長すれば、“引いて構える相手”を崩すための新しいヒントが手に入るかもしれない。そうした個人戦術のレベルアップが複数人のグループ戦術のレベルアップにつながり、11人のチーム戦術のレベルアップにつながるわけです。

その上で、例えば栃木と対戦する際に「この相手なら、この選手とあの選手の組み合わせが有効だ」と考えられるようになることが理想ですよね。個人戦術と個人戦術を組み合わせた時に、こんな化学反応的なグループ戦術やチーム戦術に生まれるのではないかという期待感のような。今の僕が向き合っている作業は、その過程にあるということです。

―― 選手たちの頭の中は、少しずつ整理されてきていると感じますか?

江尻描くべき“絵”はちゃんと見えていて、あとはどうやってそれを描くかというところだと思います。そういう意味で、結果ではなく内容的に“あと一歩”という感じのゲームが増えてきていることは間違いありません。その部分の手応えについては、僕は着実に感じています。