10th SPECIAL TALK10周年 記念対談

12008年、奇跡の残留

下 村開幕11試合勝ちなし。2分9敗。

谷 澤調べてきたんですか?

下 村覚えてるよ。

谷 澤さっすがだねえ~。

下 村あんなシーズン、もう2度と送りたくないというのが正直なところだよね。ハッピーで終われて良かったけど、やっぱり、ああいうシーズンは送っちゃいけない。それが本音だね。

谷 澤最終節は、ただ勝つだけじゃダメだったんですよね。

下 村そうそう。「いける」とはほとんど誰も思ってなかったよね。

谷 澤難しいですよね。勝っても……というところがあるから。

下 村俺もヤザもベンチスタートで。FC東京に2点をリードされて、今だから言える話だけど、当時のヤザはさっき自分でも言っていたとおり、「俺が俺が」という選手だったよね。で、ベンチでウォームアップしている時に、ヤザがアップしながら舌打ちして、「早く(俺を)出せよ!」ってブツブツ言ってた。

谷 澤フハハハハ!

下 村その姿を見て、「ヤザ、すげー顔になってる」と思った。「早く出せよ」っていう態度って、チームの和を乱すと見られることもあるかもしれないけど、その時は本気で流れを変えようとしているんだなと思ったし、「俺がチームを勝たせたい」と本気で思っているんだなと感じたんだよね。ヤザはめちゃくちゃイライラしていたけど、俺は「ヤザ、やってくれ!」と思ってた。そしたらヤザの名前が呼ばれて。

谷 澤ホントっすか?(笑)

下 村すごかったよ。後ろ姿は「さっさと出せよ!」と言っていたし、顔にも出ていたけど、あの活躍だからね。素晴らしい。

谷 澤とにかく勝たなきゃいけなかったし、あの状況で攻撃陣を入れないとダメだろうと思ってた。でも俺、そんなに怒ってたんだ(笑)。それだけ集中してたんだろうね。でも、あの試合、なぜか冷静だったんだよね。頭の中にはゴールのことしかなかった。「1点1点1点」って。ストライカーみたいな発想だったと思う。

下 村うん。ストライカーの目になってたもん。

谷 澤あの時の俺、タツさん(新居辰基)だったのかな……。

下 村なってたね、タツみたいに。1点目は、そのタツがGKの手を弾いて決めたゴール。

谷 澤タツ(谷澤)がタツ(新居)にパスを出したんですよね。

下 村そっか、アシストもしてるんだもんな。で、同点ゴールが、巻が胸で落として、ヤザが……。

谷 澤スーパーボレー。ヒャハハハハハ!

下 村3点目がレイナウドのPK。

谷 澤あの時はね、本当に「頼む頼む」って思ってましたよ。

下 村俺が途中出場で入る少し前だったんだよね。あんなに怖いPKはないね。確か、レフェリーが笛を吹いて、レイナウドが蹴るまでにちょっと時間があったんだよね。あの試合はエディ(ボスナー)が出場停止でベンチ裏で見ていて、アップしながら話をしていたんだけど、エディが結果を見ながらボロボロ泣いてたのよ。「え? こんなに強そうな人が、携帯見ながら泣いてるの?」って思った(笑)。で、めでたく3-2で勝って……という話だっけ?

谷 澤3-2じゃないでしょー!! 忘れてるよー!!

下 村誰が決めたんだっけ?

谷 澤東美さん?

下 村違うでしょ。

谷 澤俺です!

下 村いやー、すごい!

谷 澤まあ、これはね、一生語り継がれる話だと思うんでね。

下 村そ、そうね(笑)。

2あなたにとって、フクアリとは。

下 村単なる試合をする場所ではなくて、“家”であり、“劇場”であり、ファンの皆さんがその雰囲気を作ってくれる最高の場所です。

谷 澤フクアリとは。フクアリとは。フクアリとは……サッカー選手にとっての“武道館”かな(笑)

3思い出のフクアリ「ベスト3」

1
2008シーズン 第34節 FC東京戦
2
2007シーズン 第27節 FC東京戦
3
2008シーズン 第28節 浦和レッズ戦

下 村これも3-2で勝った試合。深井(正樹)の試合でしたね。1点目は試合開始20秒くらいで先制点。2点目はくるくると回って決めたゴール。あれは印象に残っています。それから、ミシェウが田中マルクス闘莉王の股間を抜いて決めたミドルシュート。先制点はヤザのアシストだったっけ?(笑)

谷 澤2008シーズン最終節の印象が強すぎて他が思い浮かびません。いや、というより、まだ“ベストゲーム”はないかな。いや、「ない」と言うとアレなんで、(下村)東美さんと同じでお願いします。