状況を変えたかった
泥臭く戦うプレーでチームに貢献し、期待された“結果”を残した。
さまざまな葛藤を抱えて迎えた新シーズンの戦いは、始まったばかりだ。
インタビュー・文=細江克弥

―― おつかれさまです。お願いします。
お願いします。
―― このタイミングで誰に話を聞くかということを考えていて、「あ、林 誠道だな」と思ったので来ていただいたんですけど……。
ホンマですか(笑)。
―― 本当なんですよ。でも実はそう思ったのは開幕前のことで、今とはまったく違う状況を想定していたんです。つまり、ちばぎんカップを終えた段階では、ポジション争いのところでかなり苦戦しているんじゃないかと。それに対する思いを聞きたいと思ったところが始まりで。
なるほど。そうですよね。で、フタを開けてみたら……。
―― 開幕戦でスタメンだったから「え? そうなの?」と(驚)。その3日後が今日、という状況で話を聞こうとしているんですけど。
いや、でもその見立てってぜんぜん間違ってなくて、俺もぜんぜんわかってなかったんですよ。キャンプから「どうなるんだろう」という気持ちというか、自分の立場を疑うような感覚はあって、監督の頭の中のファーストチョイスは別のところにあったと思っていて。でも、チームとしてはあまりいい手応えを得られていないという状況の中で、開幕戦に向かっていく感じで。
―― うん。そうですよね。
僕が直接、開幕戦のスタメンを伝えられたのは2日前で、練習の直前みたいなタイミングでした。(小林)慶行さんが「行くぞ」とひとこと。僕は日頃から監督とそんなにたくさんコミュニケーションを取るタイプじゃないし、慶行さんもそれをわかっているからひとことだけだったと思うんですけど。言われたこっちもそのひとことでわかるので……。
―― いや、でも、さすがに驚いたのでは?
びっくりしましたね。「ホンマっすか?」って言いましたから(笑)。
―― 面白い(笑)。
しかも、その週のトレーニングも、相手を想定したトレーニングに僕自身が1回もスタメン組に入ってなかったんです。1回もですよ。だから“いつもどおり”の感じで準備していたところだったので、「ホンマっすか?」という感じだったんですけど。
―― もちろんどんな状況であれ「行くぞ」と言われた瞬間にスイッチを入れなきゃいけないんだろうけど、そう簡単なことでもないですよね。
いや、ただ、なんとか自分の力でチームの状況を変えたいとはずっと思っていたので、そこは比較的すんなりと入り込めました。チーム全体が悩んでいる感じではあったし、このタイミングで自分に声がかかるというのはそういうことだと思って。うん、だから、気持ちとしては上がりましたね。
―― 監督からの期待感を感じられた。
昨シーズンが終わってから、直接的にそういう言葉はもらっていたんです。自分にとってはほとんど何もできなかったシーズンだったので、それでもそういう言葉をもらえたことは嬉しかったので。その期待に応えたいという気持ちは強かったし、単純に「ここでやらなきゃいけないな」と。
―― その時点でチームが抱えていた問題って、どこにあったんでしょう?
キャンプからずっと“新しいこと”に取り組んできて、それを浸透させることにかなりの力を注いできたんですけど。でも、プレシーズンに組まれた試合がほとんどJ1のチームだったこともあって、自分たちがやりたいことをなかなか表現させてもらえなかったんですよね。“新しいこと”を共有することはできていたからこそ、それがうまくいっていると感じる機会が少なかったことで難しくなってしまったという感じで。
―― なるほど。
僕はそう思っていました。もちろんポジティブな部分もたくさんあったんですけど、練習試合の中でひとつのミスから「あれ?」となってしまうというか。新しいことをやっているし、準備段階だから「そんなもんだろう」という感覚もありつつ、やっぱり個の局面でJ1の相手に力負けするところがあって、チーム全体として自信を掴むのがなかなか難しかったですね。

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