鳥栖戦後にめぐらせた思考
指揮官は最前線に呉屋大翔をチョイスした。
その背景には背番号9の変化があった。
インタビュー・文=細江克弥

―― 鳥栖戦のミックスゾーンで少し話を聞かせてもらって……今はその3日後でオフ明けのトレーニング前という感じなんですけど、頭の中はちゃんと切り替わった?
うーん、そうですね。一応。切り替わった……かな。ギリギリですけどね(笑)。
―― どんな思考をめぐらせたんだろうか。
そうっすね……。でもまあ、最終的には「やるべきことをやる」という結論に着地するんですよね。あの試合後は割としっかりショックを受けていたので、あんまりちゃんとしたことを言えなかったんですけど。―― でしたね。めずらしく。
はい。ああ、これでも勝てないのか……と思って。でもまあ、勝点が近いチームも一緒に負けてくれたから、そのへんは今シーズン、やっぱり持ってるなと思うところもあったりして。いやいや、それにしても最後のクロスに俺の足は届かんのか……とか思いながら。そんな感じっすね。
―― あえてそこを掘り下げると、あのクロスに足が届かなかったことってどう解釈すればいい?
いや、でもまあ、自分としては、ああいうギリギリのシーンを作れている時は割といいほうなんで。
―― なるほど。
ああいうのを増やしたい。それがひとつです。でもああいう試合展開だったら、ああいうチャンスはなかなかないので、とにかくあれを仕留め切りたいですよね。FWの選手としてあれだけ守備にパワーを使った上で、最後にああいう形で点を取れたら……うーん、もっと、気持ち的にすっきりしながらプレーできるのになと思ったり。はい。
―― チームに求められることをフルパワーでやった上で、最後にあれを決めるのが今の自分にとっての明確な目標だから、それができなかったことが悔しい。
そうです。あの守備、あの強度、あの戦術の中で、あのゴールを取り切りたい。取れれば一気に変わるという感覚です。個人的には。
―― しかも、鳥栖戦に関しては絶対にそれができると信じ切っていたからこそ、できなかったことに対して「割としっかりとショックを受けた」ということか。
そうです。チームとしてもそれ相応の練習とか準備ができていたし、その前の数試合の流れを踏まえても勝ちたかった。という感じで、どう考えても勝つしかないゲームだったから負けたことがショックだった。でもまあ、だからと言ってやるべきことが変わるわけじゃなく、「やるべきことをやる」という結論に至るんですよね。
―― うん。
そういう感じで頭の中を整理して、今日、ここに来ました。
―― 僕自身の立場においても「どう考えても勝つしかないゲーム」という言葉の意味はよく理解できているつもりで、だからこそ、ああいう負け方をした直後に選手にどんな言葉の投げ方をしてミックスゾーンで会話をするのかについてまあまあちゃんと考えるんですけど。
ああ、はい。
―― でも、あの試合後のミックスゾーンで呉屋選手と面と向かった時、なんとなくフォローするような意味でポジティブな言葉を絞り出してしまった。「負けはしたけど示すべき姿勢は示した」みたいな。
ああ、はいはいはい。確かにそうでしたね。
―― そしたら「いや、あれで満足してたらダメ」と返してきたでしょ? それでハッとさせられたというか。
ハハ(笑)。こっちはこっちで、細江さんの話を聞きながら「気を遣ってもらっちゃってるな」と思ってましたよ。
―― ですよね。だから「やっちまったな」と。呉屋大翔のメンタリティーを小さく見積もってしまったことを反省しながらの会話だったんですよ(笑)。
いやいや、あれはあれで励まされました。なんかすみません。

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