それぞれの思い。それぞれのこだわり
デザインの細部には、近藤が作成した「ジェフのすべてがわかる資料」に込められた“思い”がしっかりと反映されていた。
メインカラーであるイエローは30年前からある“オリジナルカラー”にこだわり、襟口には「サポーターとともに」を意味する「12」の“ジェフフォント”が刻まれた。さらに、同じく襟口にはクラブフィロソフィーである「WIN BY ALL!」もはっきりとあしらわれている。
また、デンマーク・コペンハーゲン市内のスーパーキーレンパークをモチーフとする曲線デザインによって「ダイバーシティ」を、さらに再生可能素材を使用することで「サステナブル」を表現するなど時代背景を踏まえた“新しさ”にもこだわった。
検討委員会では、勇人が“色”に対する強いこだわりを示した。
「ジェフには“ジェフイエロー”という独特の黄色があって、それは自分たちの世代にとって憧れの色なんです。最近は蛍光色のユニフォームが多くてそれも良かったけれど、少しずつ“ジェフイエロー”の印象が薄れていくことに寂しさを感じていました。だから、30周年という節目を迎えてあの独特の黄色を大事にすることの意味はあるんじゃないかと。セカンドもそう。自分は白よりも、ジェフの前身である古河電工サッカー部にゆかりのある“ネイビー”を推したかった」
2ndユニフォームの色については、“組み合わせ”の観点から考慮しなければならないことがあった。近藤が説明する。
「大前提として、ユニフォームは“試合で着るもの”であるということです。相手のユニフォームにももちろん色があって、それと重ならない組み合わせ、選択肢を持っていなければなりません。私はかつて運営を担当していたのですが、これが、実はなかなか大変なんです。“濃”と“淡”がはっきりした色をチョイスする必要があるので、フィールドプレーヤーとGKそれぞれの色を決める際には、そのことを念頭に入れた組み合わせを考えなければならないのです。だから、ユニフォーム制作にはそのことに詳しい現場の運営担当の存在が不可欠なんですよ」
2ndユニフォームのカラーについてのヒュンメルからの提案は“白”だったが、そうした試合運営の観点から、当初GKの2ndユニフォームとして採用しようとしていた“ネイビー”に変更された。
「ユニフォームには、いろいろなこだわりが詰まっています。例えば、チームマネージャーの後藤くんは現場の意見を臆することなくズバズバと伝えてくれました。前年モデルよりも着丈が短い理由は、選手のパフォーマンスを最大限に引き出そうとする彼の強いこだわりにあります。やはり、現場を代表する意見は必要だった。改めてそう感じました。
それから、ユニフォームについては史上初めて“昇華転写”という印刷方法を採用しました。これにはヒュンメルさんの強い意向もあったのですが、スポンサーロゴを“シール仕様”としないことで軽さを実現しています。また、デザイン的な統一感を出すために1st以外のスポンサーロゴを同一色(白と黒)にしました。これは本当に難しいチャレンジでした。でも、スポンサー営業チームが一丸となって実現にこぎつけました」
制作は着々と進められた。全体のデザイン案については第1回提案にあった3案のうち「2つを組み合わせたもの」をジェフ側の意見とし、その3週間後、ヒュンメルから第2弾デザイン案が提出された。それは、誰が見ても「カッコいい」と納得できるものだった。
そうして迎えた2021年7月上旬、2022シーズンモデルのユニフォームデザインは最終承認に至った。