JEF TALK!ジェフトーク!

#99

「変われば、勝てる。」カルメレ トレス監督

10

3

#99 変われば、勝てる。

ベストな判断をするために



―― これも日本人選手の特性のひとつとして、相手との力の差があると判断した時に「パスをつなぐのが怖い」と感じてリスクを避けようとする傾向があると思うのですが、それについてはいかがですか?

確かにそういう傾向にあると思っているので、日々のトレーニングでも、試合前にも、ハーフタイムにも、それから試合後も「もっとチャレンジしなければいけない」ということを何度も何度も伝えています。もちろん簡単なことではないことも理解しているのですが、最終的に目指すところとしては、ピッチに立つすべての選手がもっと積極的にチャレンジできるような“構造”を監督である私が作ってあげなければならないと思っています。

―― なるほど。チームの特性、選手の個性に合った構造を提示することで、より積極的なチャレンジを促すことも可能なのですね。

もちろんです。それからもうひとつ、大切なのは選手それぞれとしっかりとしたコミュニケーションを取ることだと思っています。あなたの武器はこれだよ、あなたのコンディションは私から見てこれくらいの状態だよというメッセージをはっきりと伝えてあげることで、互いに気づき、改善できることが必ずありますから。

そうしたコミュニケーションは選手にとっての安心につながると考えていますし、自分の武器、自分のストロングポイントを自覚することでチャレンジに対する意欲も湧いてくる。そうしたアプローチによって、チーム全体が自信に満ち溢れ、どんどんチャレンジする雰囲気を作り出したいと考えています。


―― “結果”に対してはどのように向き合いますか? まだシーズン序盤の今こそチャレンジを強調することができると思いますが、スケジュールが進めば結果に対するリアリティーはどんどん増していく。「結果」と「チャレンジ」のバランスについては、どう考えていますか?

その2つの言葉は対極にあるものではありません。「チャレンジ」といってもすべてにおいてそれが当てはまるわけではなく、先ほどもお話ししたとおり、常にリスク管理が伴うものであると考えていますし、その時々に「ベストな判断をすること」を意味するものでもあります。自分の武器は何なのか。その瞬間のシチュエーション、つまり相手も含めてピッチに立つ選手の配置はどうなっているのか、ボールの流れはどうなのか、そういったすべての文脈を判断材料として“ベスト”を模索することがチャレンジだと思いますし、その能力を高めるためのトレーニングは、シーズン序盤であれ終盤であれ変わらずやり続けます。

チームレベルの話としては、基本的には自分たちのそうしたスタイルを貫きたいと思っているし、ボールを主体的に動かしながらプレーしたいし、コンビネーションに対するこだわりも持ち続けたいと思っています。向き合い方の難しさは結果によって出てくると思うのですが、自分たちのスタイルを手放すようなことはしたくありません。

私の理想は、105×68メートルのピッチではなく、90×40メートルのピッチで戦った時に自信を持って「私たちのほうが有利だ」と言えるチームです。もちろん現段階では難しいことはわかっているので、むしろ105×68メートルのスペースをうまく活用しながら、少しずつコンビネーションのバリエーションを増やしていく段階にあると思います。私はこのチームをもっともっと進化させたいし、到達したいと考えるレベルははるか先にあります。