一番嬉しかったこと

―― (石川)大地選手、よろしくお願いします。みんなで踏ん張りながら戦ってきた百年構想リーグ、どう感じていますか?
うーん……内容的な部分では手応えを感じられるところもたくさんあるんですけど、やっぱり、今一番ほしいのは結果ですよね。チームとしてもそうだし、個人としてもそう。最近は点を取れていないので、そこにフォーカスしてやっているつもりなんですけど……やっぱりその部分を、もっともっと強く自分自身に求めなきゃいけないと思っています。
―― あらためて、百年構想リーグは簡単じゃないと思うんです。モチベーションの持っていきどころ、メンタリティーの揃えどころがすごく難しい。そのあたりについては?
そうですね……。まずは個人として自分が試合に出ること、それから結果を出すことをモチベーションとしてきましたけど、やっぱりチームが勝たなければ試合に出続けることはできないと思っていて。FWの選手だったら、当然点を取らないとチームを勝たせられないし、選手として生き残れないですよね。ただ、それをプレッシャーに感じているというより、僕自身にとって初めてのJ1ですし、単純にひとりの選手としてワクワクしながらピッチに立ってきたという気持ちのほうが強いというのが正直なところです。
―― なるほど。
勝てていないからこその難しさはもちろん感じています。負ければ元気がなくなるのがサッカー選手なので、そういうところのコントロールはやっぱり難しいですよね。「できた」という感覚が結果に結びついていないので、もどかしいというか、いろいろな感情があるというか。
―― 想像できます。きっとそれぞれに違う種類のモヤモヤを抱えているんだろうなと。
うん、そうですね。そうだと思います。
―― ゆっくり話すのが久しぶりなので、せっかくだから昨シーズンの話もちゃんと聞きたいなと思っているんですけど。
ありがとうございます。やっぱり、「ここ最近で一番嬉しかったことは?」と聞かれたら昨シーズンのJ1昇格を挙げますね。もしかしたら、人生全部さかのぼってもあれが一番嬉しかったかもしれません。自分の中ではそういう感じです。
―― それはちょっと意外かも。大地さん、あんまりそういう感情を表に出さないから。
自分は感情を表に出すタイプじゃないので、わかりづらいと思うんですけど……でもやっぱり、昨シーズンはプレーしていてずっと楽しかったし、あれだけの緊張感の中で勝ち取ったからこそ嬉しさも倍増したというか、そういう感覚なんだと思います。
―― 嬉しすぎて自分でもびっくりするくらいの奇行に出てみたり。
それはないです(笑)。でも、嬉しすぎたのか、ホッとしすぎたのかわからないですけど、2日後くらいにインフルエンザにかかっちゃいました。
―― 面白い。
かなり気を張った状態で長い時間戦っていたので、解放された瞬間に一気に緩みすぎちゃったんですよね。たぶん。今になって振り返っても、あのとんでもない緊張感の中で何カ月も過ごすのって……ひとつ負けたらどうなるかわからないというギリギリの状況でずっとやっていたので、最後の最後に自分たちの目標を達成できた瞬間の安堵感はやっぱりすごかったですから。ああいう感覚になったことは今まで一度もないので、やっぱりすごい時間だったんだなと思います。
―― そりゃあ風邪も引くか(笑)。
ですね。情けないですけど(笑)。
―― オフが短かったと思うんですけど、その喜びに浸る時間ってちゃんとありました?
そうですね。意外とちゃんと浸っていました。旅行に行ったりしても“嬉しいまま”で、ずっとパジャマとして昇格記念の黄色いTシャツ着てましたから。「持っていこうかな」じゃなく「持っていこう!」と思って持っていきました。
―― そういうこと、もっと積極的に普段から教えてほしいんですけど。
いや、普段からは言いません(笑)。
―― でも、とにかく浮かれていた。
だいぶ。それくらい嬉しかったですから。でもまあ、年が明けてからは徐々に気持ちを落ち着かせていって、目標を設定し直すというか、気持ちを切り替えていきました。J1は自分がずっと目標にしてきた舞台なので、そのあたりもうまく切り替えられたんじゃないかなと思います。
―― じゃあ、燃え尽きて力が入らないという感覚にはならなかったんですね。
自分の場合はまったくなりませんでした。本当にサクッと切り替えるような感覚で。自分はJ3でも長くプレーした選手なので、下からはい上がってJ1でプレーすることが近くて大きな目標ではあったので。やっとこの舞台にたどり着くことができたからこそ時間をムダにしたくないし、1日1日、1試合1試合を絶対に意味のあるものにしたいなと。
自分みたいな選手はほかにもいると思うんですけど、僕自身のことで言えばJ3のチームで契約満了になった経験がありますから。あの時はプロとしてサッカーをやる場所がなくなってしまうかもしれないという強烈な危機感があったので、なんとかガイナーレ鳥取に拾ってもらったんですけど、やっぱりJ1でプレーする未来を想像するのは難しかったんです。でも、心のどこかにある「自分ならやれる」という自信を完全に失うことはなかったし、あそこからちょっとずつ上がってきたからこそ……。
―― ボーっとしている暇はないと。
本当にそのとおりです。
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