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#109

「信じて前に。」鈴木大輔

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#109 信じて前に。

J1を“自分たちの舞台”に

インタビュー・文=細江克弥



―― まもなく開幕ですが、大輔選手自身のコンディションはどうですか?

「もう一歩」という感じですね。でもだいぶ上がってきているし、百年構想リーグで負ってしまったケガを治すところからスタートしたんですけど、そういう意味ではここまで順調に調整できていると思います。キャンプに入ってからのトレーニングも、スタッフと相談しながらかなり慎重に進めてきました。

―― 大輔選手自身は百年構想リーグについては6試合出場。ケガもあって外から観る機会が多かったと思うんでけど、全体としてどんなことを感じた20試合でした?

もちろん結果も大事なんですけど、それよりも大事なことがあると思って臨んだ百年構想リーグで、まずは久しぶりに体感するJ1の舞台を「こんな感じなんだ」と実感するところから始まりました。その上で「十分にやれる」と感じたわけですけど、ただ、そこから先は結果を掴み取ることの難しさに直面して、特に攻守両面で最後の局面の質の違いを感じるようになりました。それは、チーム全員が同じように感じたことだと思います。
すごくシンプルに言うと、ピンチがそのまま失点につながってしまう確率が高かった。「クオリティーの差」と言えばそれまでなんだけど、それを埋めて、結果を掴み取るには自分たちが思っていたよりも小さくない差を埋めなければならないなと。

―― なかなか結果が出ない中で、5月以降は試合数が多くて頭の中を整理する時間もなかったのでは?

そうですね。そういう意味でもメンタルを維持するのは簡単じゃなかったと思うんですけど、試合に出ていたメンバーは、よく耐えてピッチに立ち続けてくれたと思います。だからこそ得たものも大きかったと思うんですけど。

―― 百年構想リーグが終わって頭の中を整理する時間ができた段階で、たぶんファン・サポーターの皆さんも「本当にこの差を埋められるのか?」という疑問にぶつかったと思うんですけど、それについてはどう思う?

難しいですよね。現時点ではっきりとした答えを出すことはできないんですけど、自分たちとJ1の間にある差は何なのかと考えると、やっぱり僕は「成功体験の差」だと思うんです。J1の選手、特に上位を争うチームの選手たちは自分たちより多くの成功体験を重ねているからJ1にいるわけで、だから根本的に備わっている自信が違う。

―― 自信があるから技術を発揮できる。

はい。場馴れもありますよね。だから余裕がある。J1という舞台を何の疑いもなく“自分たちのステージ”と思えることはめちゃくちゃ重要で、それは「J1でどれくらいできるんだろう」と思っている選手とは根本的に違うので。まずはそのメンタルが備わっているかどうかが大きな差になると思うんです。もちろん個の質の差もあるけれど、それもメンタリティーとしての土台があるからこそだと思っているので。

―― 同感です。弱者がそのメンタリティーを備えるためにはJ1の舞台での成功体験が必要だけど、もちろんそれは簡単じゃない。まずは、その壁が思ったよりも高いと感じた百年構想リーグだった気がします。

チャレンジャー意識はめちゃくちゃ大事なんですけど、やっぱりその意識が強すぎてもダメなんですよ。サッカーはあくまでチームスポーツで、相手も同じサッカー選手なんだからリスペクトしすぎる必要はなくて。ここまで這い上がってきた自分自身の力を疑う必要はまったくなくて、同じ舞台に立っている以上、ここで相手を上回って評価を上げれば海外でプレーする道だって開けるし、日本代表の道も見えてくる。そういう野心を思い切り表現することが大事だと思うんです。

―― 今のチームは、そういう野心を持てているのだろうか。

外から見ていて思ったのは、百年構想リーグではそれぞれができる限りのトライをしたと思います。チームとしてもいろいろなことにトライしたし、その中で積み上げたことはちゃんとあったと思う。百年構想リーグがあったことは自分たちにとってはラッキーで、あの20試合を通じてトライしたこと、積み上げたことに対する自信を失っちゃダメだと思うんです。
J1リーグが開幕しても苦しい時間が続くとは思うけれど、成功体験を積み重ねて、それが結果につながれば一気に道はひらけると信じているので、どんなに苦しくてもこれまで積み上げてきた自信とトライし続けるメンタリティーを失っちゃいけない。百年構想リーグの経験は絶対にムダじゃないし、むしろ財産でしかないと思うので、自分たちを信じて続けるしかないんですよね。

―― 例えば、センターバックのポジションでフル回転だった久保庭良太選手と河野貴志選手はものすごい経験を積んだとも言える。

間違いないですよね。自分たちの力で殻を破らなきゃいけない、成長しなきゃいけないという気持ちでもがいている彼らの姿を見てきたし、試合を重ねながら、実際にちゃんと成長していたと思いますから。もちろん失敗のほうが多かったかもしれないけれど、彼らの中に積み上げられた経験はチームにとって大きな財産になると思います。



―― センターバックという難しいポジションだからこそ。

サッカーだから“まったく同じシチュエーション”はありえないんですけど、センターバックの選手にとっては「このタイプの選手にこういうやられ方をした」とか、「こういうシチュエーションでこういうやられ方をした」という経験が自分の引き出しになるんですよね。だから、単純に「やられた数だけ成長した」と言えると思うんです。そういう意味で、ボニ(久保庭)と(河野)貴志は誰よりも多くの“種”を手に入れたんじゃないですか? 僕はそういうふうに捉えてほしいと思っているし、実際にそうだと思っています。

#109 信じて前に。

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