MIXED ZONEオフィシャルライター細江克弥の取材記録「ミックスゾーン」

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「2023/2/18 J2リーグ第1節 vs長崎(トラスタ)」MF10 見木友哉

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#1 2023/2/18 J2リーグ第1節 vs長崎(トラスタ)

―― いやー、観ていて興奮する素晴らしいゲームでした。

ホントですか? それなら良かったです。

決定機の数としては互角くらいかなという感じだったけど、そういう互角のゲームを勝ち切ることが大事だし、開幕から波に乗れるのはホントに大きいと思うので。まずは結果ですよね。開幕戦は。

―― 立ち上がりについては「全員で前から行け」という指示だったと思うんですけれど、その時間帯が少し落ち着いて、個の局面で相手に上回られたことでやや後退せざるを得なくなった。「じゃあ次はどうする?」というところが前半のポイントだったと思うんですけど。

そう思います。チームとしては「基本的には前から行きたい」「ブロックを敷いて守りたくない」という意識があったんですけど、やっぱり“全部”は無理なんですよね。だからその意識を合わせてブロックを作らなきゃいけない場面があることはわかっていました。実は、相手のシステムが予想していたものとは違っていたこともあって、その難しさも少しありました。

―― あ、そうなんですね。長崎のシステムは4-4-2だったけど、どう予想していた?

4-3-3です。だから、基本的には今日の自分たちは守備時は4-4-2ではなく5-3-2で対応しようと。そこからウイングバックを前に出して攻撃しようという感じでした。でも、それができなくて5-3-2のままになってしまった時に、中央を固めることはできても、“ボールを奪う”ことは簡単じゃなかった。そのスペースを相手のサイドバックにうまく使われてしまって、そのせいで後手を踏んでしまったところがありました。

―― その状態で相手からボールを奪うためには?

サイドに追い込んで、バックパスさせて全体を押し上げることが大事ですよね。守備ではその部分に課題があったのかなと思います。

―― なるほど。ただ、劣勢にしてはみんなが落ち着いてプレーしているように見えたし、いくつかあったミスに対してもネガティブなリアクションを絶対に見せなかった。そういう姿勢がすごく伝わってきたし、それが後半の攻勢につながりましたよね。

そのとおりだと思います。誰かがミスをしても誰も気にしていないし、カバーすればいいだけ。そういう意識が強いからこそ、チーム全体がネガティブな雰囲気にならないというか。

―― 攻撃の侵入経路としてはどこが有効であると思っていました? スタンドから見ていると、ボールが右ワイドにあるなら左インサイドの見木選手、ボールが左ワイドにあるなら右インサイドの田口選手が空いていて、そこから前に運べると感じていました。

自分もそう思っていました。特に自分のサイドは相手のサイドハーフの選手が最終ラインに吸収されて5-3-2のような形になることが多くて、自分の周りに使えるスペースがあるなと。中盤の3枚の横スライドが大変であることは自分たちの経験からよくわかっているので、ボールが右にあったら左の自分が必ず空く。逆なら泰士くんが空く。うまく使えたシーンもいくつかあったけど、もっとそこを有効に使って縦に運ぶことはできましたよね。相手の2トップの守備も、それほど丁寧な感じではなかったので。

―― そう思いました。それにしてもしかし、今日の見木選手はめちゃくちゃ気合が入ってたように感じました。あのシュートブロックはマジでカッコよかった。

いやー、まあ、そうですね(笑)。身体を張るのはチームとして求められていることだし、あのシーンは自分から(小林)祐介くんにパスを出したところを狙われてしまったんですけど。自分のミスからということもあったし、とにかく追わなきゃいけないなと。そこで相手のパスがズレてくれたことにも助けられたし、もしあのパスが100点だったら余裕でシュートを打たれていたと思います。

自分の心境としては、ボールを持っている選手の動きが少し遅かったので「間に合う」と思えました。それで身体を投げ出してのブロックだったので、ホントに、あのシーンから失点しなくて良かったなと。

―― 悪天候もあって、体力的にはめちゃくちゃキツい時間だったと思います。だから、ミスをして、守備に切り替えるその瞬間は少し迷ったように見えました。でも、それでも踏ん張って、気持ちを入れ直してぐんとスピードを上げた。「ここは自分がいかなければ!」という気持ちが見えた気がしました。

わかりました?(笑) 自分がミスをした瞬間って、一度足が止まってしまうことが多いですよね。あの一瞬、確かに自分も止まってしまったので、その一瞬をいかになくせるかがこれからの課題だと感じました。相手がもう1歩早ければ間に合わなかっただろうし、パスがパーフェクトだったら間に合わなかった。だから、ああいう場面でももっと本能的に身体が動くようじゃなきゃいけないなと。追うか追わないかを迷っているようじゃ、まだまだダメだと思います。

やっぱり、これだけアグレッシブなサッカーをやろうとしている今は、ああいうミスがつきものだと思うんです。でも、このサッカーで勝とうとしているんだから、その部分は絶対に乗り越えなきゃいけない。これからの試合では、今日より一瞬でも速く切り替えて、一瞬でも速く身体を反応させる。それを本能的にできるようになれば、失点は間違いなく減ると思っています。

―― なるほど。そう考えると、あのシーンからその感覚を掴めたことはめちゃくちゃ大きいかもしれませんね。見木選手自身にとっても。チームにとっても。

うん、そうかもしれません。自分の中では間違いなくひとつの基準になると思います。

―― チームとしてこの試合に勝ったことの意味についてはどうですか? 試合直後の今は、最高の気分だろうと思うけど(笑)。

最高です(笑)。チームとして、小林(慶行)監督になって個人的には手応えしか感じていなかったし、でも、だからこそここで結果が出なかったらズルズルとネガティブな方向に引っ張られてしまう“可能性”が生まれてしまう。そうなると、不安に思う選手が出てくる“可能性“もありますよね。スタートダッシュを実現して、みんなが「このサッカーを信じ切る」というメンタリティーを持ち続けるためには、この試合に勝つことは絶対的に必要でした。次のモンテディオ山形戦、その次のザスパクサツ群馬戦と、波に乗れたらチームとしての自信が芽生えてくるし、そうなればもっとどんどんチャレンジできるチームになれると思います。だから、今日勝てたことは一番です。次も勝てるように、いい準備をしたいと思います。

―― 切り替えて、追って、渾身のタックルでシュートブロックして。あんなにガッツポーズ決めて叫びまくってる見木選手は初めて見ましたよ。

ハハ(笑)。いやー、もう、ホントに嬉しかったです。あのシーンは。