僕は意外と深いですよ
高卒3年目。アタッカー陣においては異彩を放つストライカーは、 さまざまな経験を重ねながら着実に成長し、 特別で大きな期待を背負うタレントへと変貌しつつある。
インタビュー・文=細江克弥
―― あ、ブワニカ選手、おつかれさまです。
おつかれさまです……え?サンダルで大丈夫ですか?
―― 大丈夫です。今日は文字のインタビューなので。
え?も、文字?……あ、そういうことか。了解です(笑)。
―― (笑)。ブワさん、実はこの企画に登場してもらうのは初めてですよね。
そうですよね。ありがとうございます。何を話せばいいですか?
―― 用意していることは何もないので自由に(笑)。
わかりました。そのほうがいいです。
―― ここのところ試合に絡むようになってきて、どんなことを思いながら毎日ピッチに立っていますか?
いや、もう、とにかく自分が点を取ることしか考えていません。あとは……自分のためというより、家族のために頑張ろうと思ってやっている感じです。練習も試合も。
―― なるほど。なぜ?
自分が頑張れば家族の生活を支えられるし、やっぱり、家とかも買ってあげたいなと思っていて。そういう思いが中学・高校の頃からあったので、そのために毎日の練習を頑張って、家族のために働けたらなと思っています。
―― 子どもの頃から、かなりリアルな願望としてそう思っていたんですか?
うーん……そうですね……。うちの実家って賃貸なんですよ。だから自分たちの家を買ってあげたい。お母さんが年を取ったら働けなくなるから、その前に自分が稼いで買ってあげられたらなって。中学の頃からずっとそう思っていたので、プロになれた瞬間に「買える!」と思ったんです。でも、そんなに甘くなくて(笑)。
―― そりゃそうだ(笑)。
プロの世界でも“上”に行かないとダメですもんね。ただ、妹にはお小遣いをあげたり、学費を払ってあげたりもしたいので……そのためにも頑張りたいなって。
―― 妹さんはいくつ離れているんですか?
今、高校3年生です。2人兄妹です。
―― なるほど。ということは、今、試合に絡んで点を取って、それを喜んでくれる家族の姿を見るたびに「やっぱ頑張らなきゃ」と思うというか。
はい。本当にそのとおりです。もちろん自分のためでもあるんですけど、自分のために頑張るよりも家族のために頑張るほうが力が出る気がしていて。やっぱり、人のために頑張ったほうが妥協しなくなりますよね。僕の場合は、ですけど。
大分戦で今シーズン初ゴールを決めたじゃないですか。あの試合って3月19日だったと思うんですけど、前日の18日がお母さんの誕生日だったんです。だから「絶対に取ってやる」と思って臨んだ試合だったので、本当にそれができて良かったなと。もちろん勝たなきゃいけないんですけど。
ホームの東京ヴェルディ戦で決めたゴールは、妹もすごく喜んでくれて。そういう姿を見ると「続けてて良かったな」と思いますよね。で、「もっと取らなきゃ」とも思うんです。
―― そうなんだ……。しかし、冒頭からそういう話になるとは思わなかった(笑)。
僕もです(笑)。とにかく、僕、家族のことが大好きなんですよ。試合に出て、点を取って、家族に喜んでもらいたい。ちなみにお父さんとお母さんはサッカー経験者で、お母さんは結構ちゃんとしたチームでプレーしていたんですよね。それがきっかけで自分もサッカーをやるようになったし、妹もサッカーが大好きになって。
妹なんて、俺よりサッカーに詳しいですよ。自宅でも選手名鑑を読んでいるくらいで、Jリーグにめっちゃ詳しい(笑)。もちろんフクアリもよく来ます。僕が試合に出る時は必ず。だから、僕自身が週末の試合でチャンスをもらえそうな時は、必ず家族に伝えてフクアリに来てもらっています。僕が試合に出ない試合でもたまに観に来るんですけど、そういう時は「ああ……」と思いますよね。「俺が出てたら家族も喜んでくれただろうな」と。
―― ブワさん、なかなかに深い。
はい。僕は意外と深いですよ(笑)。
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