涙は出ませんでした。
今シーズンの見木友哉はひたすらピッチに立ち続けている。
得点数は満足できるものではないが、背番号10の存在感は圧倒的だ。
今シーズン最終盤、キーマンの1人であることは間違いない。
インタビュー・文=細江克弥
―― 見木選手、おつかれさまです。
おつかれさまです。
―― こうして落ち着いて話を聞くのはUnited#309の巻頭インタビュー以来だから約半年ぶりなんですけど、あの時はもう、チームとしての状況がかなり悪かったからとにかく申し訳なかったと思っていて。
でしたね(笑)。ちょうど藤枝戦のあとじゃなかったでしたっけ?
―― 4月14日だから……そうそう、まさに藤枝戦の直後。あの時のインタビューでは「信じて続ければ大丈夫」と話していたけど、やっぱり、内心ではかなりの怖さも感じていたのでは?
藤枝戦の負けは、それまでの負けとは意味がぜんぜん違いましたからね。それまでは内容が良くて、でも決めるべきところを決められなくて星を落としていたけど、あの藤枝戦は自分たちのやってきたことがまったく出せずに“ただ負けた”という感じだったので。うん。完敗でしたね。だから「ヤバいな」と思っていたし、今シーズンが始まる時に持っていた自信が少し崩れかけるというか、そういう部分は少なからずありました。
―― 本当に本当の本心では、「それでも何とかなる」と思えていた?
チームを信じてそう思う気持ちが半分、「このままズルズル行ってしまったらヤバい」という気持ちも半分という感じでした。
―― 見木選手の中には、昨シーズンまでとは大きく異なるサッカーだからこそ(小林)慶行さんと一緒に戦いたいという思いがあった。でも、あれだけ結果が出なくて苦しい時期があると、その判断が「間違っていたかも」と思う瞬間はなかった?
いや、それはまったくありませんでした。あの頃の自分が感じていたのは、とにかく勝点3を手に入れることの難しさです。「内容が良くてもこんなに難しいのか」と。そこはちゃんと理解できてなかったかもしれないけれど、とにかく自分たちがやっていることやピッチで表現している内容には自信がありました。
―― いやいや、そうは言っても悩む時間もあったのでは?
悩む……いや……そういう感じではなかったですね。
―― SNSには見木選手のパフォーマンスを批判する人もいました。僕自身が反論しようかなと思ったこともあります。
ハハ。僕自身はほとんどチェックしてないので気になりません。もちろん、自分自身もたくさんのチャンスがありながらゴールを決められなかったので、そこに対する反省や「どうにかしなきゃ」という思いはありましたけど。人から言われてというより、自分自身に対して腹立たしかったですね。
―― そういう思いを抱えて、人知れず自宅で涙したり。
まったく。そういうタイプじゃないです。
―― あくまで淡々と?
そうですね。自分たちの試合映像を観て振り返りながら、いいところと悪いところを丁寧にピックアップしていく感じで。そういう作業の中で感情的になることはまったくなくて、基本的には冷静に経験を積み重ねていったという感覚でした。試合で起きた現象に対して、次の試合でどうするか。それを考えて、自分たちの力に変えることに集中していた気がします。
―― うん……そうやって冷静に、淡々と積み重ねてきたことは何となく想像できるし知っているんですけど、そうはいっても、さすがの見木友哉でも、ひとりになったらいきなり泣き崩れたりすることもあるんじゃないかと。
ハハ。すいません、まったくないです。涙は出ませんでした。
―― ——ですよね。すみません。完全に誘導尋問みたいになっちゃって(笑)。
いえ、むしろすみません(笑)。
MEMBER ONLY
このコラムの続きは会員限定です。
下記ボタンよりログイン・会員登録をお願いします。