“次の姿”をイメージして。
指揮権を握って3年目となる2025シーズンを指揮官はどう戦うのか。
チームを進化させるために、「やるべきこと」は見えている。
インタビュー・文=細江克弥
―― 慶行さん、朝からすみません。しかもオフ中に。
いえいえ、ぜんぜん大丈夫です。
―― 今シーズンもおつかれさまでした。さっそく始めますね。
はい。よろしくお願いします。
―― 11月25日に契約更新のリリースがありました。まずは、その契約に至る流れというか、背景にある思いについて教えてください。
僕自身としては「チャンスをいただけるなら、もちろんやりたい」というのが素直な気持ちでした。その考え方は、基本的にはどういう状況でも変わりません。この2年間、自分が全力でかかわってきた選手たちととんでもなく大きな目標に向かって全力で突っ走ってきましたけど、この年齢でこれだけ熱くぶつかっていける環境に出会うのは簡単じゃない。それをみんなで作り上げてきた2年間があって、スポンサーやサポーターを含めてみんなの熱が高まっているという実感がある。そういう状況でもう1年自分にチャンスをいただけるなら当然やりたいと思っていたし、「やれる」という気持ちが自分の中にあるというのが大前提です。
あとはクラブの考え方ですよね。予算規模に照らし合わせた自分たちの現在地があって、だからこそ“積み上げ”が大事であると判断してくれたのだと思っています。やっぱり、例えば2倍、3倍の予算規模を持つクラブと張り合うためには積み上げで勝負するしかない。そのことがこの2年間でより明確になってきていると思うんです。それを踏まえて自分に契約更新の話をいただけたことを嬉しく思っていますし、それに対して僕自身が迷うことはありませんでした。
―― ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、おそらく、監督や選手だけじゃなく、ジェフにかかわるすべての人が2024シーズンのJ1昇格に懸けていたし、並々ならぬ気持ちで1年を戦ってきたと思うんです。だからこそ、結果に対する失望も小さくなかった。そういう意味で、慶行さん自身の気持ちが落ちるというか、エネルギーが小さくなってしまうことはなかったんですか?
いや、正直に言えば、もちろんそれはありました。ああいう形で負けたこと、目標を達成できなかったことに対するショックはとんでもなく大きかったし、おっしゃるとおり「この1年に懸ける」という思いは強かったので、僕自身のエネルギーの縮小するという感覚は間違いなくありました。
細江さんとは1年前も同じタイミングで話しましたよね。あの時もそういう話をしたと思うんですけど、気持ちとしては1年前とまったく同じです。やっぱり、自分の中にエネルギーが残っていないことがわかるし、体調という意味では最近はとにかくずっと眠たくて。おそらく、それって僕の身体が正常さを取り戻そうとしているんだと思うんですよ。シーズン中は24時間ずっとアドレナリンが出ているような状態で、ある意味、眠らなくても眠たくならなくて。そういう意味でも身体のエネルギーはめちゃくちゃ小さくなってしまっているんですけど、でも、それはこの仕事に対するモチベーションとはちょっと違うもので。
―― ということは、メンタルは落ちていない?
はい。疲れを感じる一方で、ちゃんと冷静に頭を動かせている自分もいるんです。例えば、今シーズンの戦いで明確に力の差を見せつけられた相手がいて、じゃあ自分たちはなぜ勝てなかったのか、どうしたら勝てるのかを冷静に考えている。身体の中にエネルギーが残っていなくても、頭の中の整理はずっと続けているんですよね。あの山形戦が終わってからずっとそうです。
ただ、やっぱり自分自身によるフィードバックだけじゃどうしても偏ってしまうので、強化からのフィードバックも頼りにしているし、そういう意見に対して自分なりに選択しながら、「どうすれば勝てるか」の考えをめぐらせていました。その状態で「もう1年」という提示をいただけたらやっぱり嬉しいし、もう1年やらせてもらえるならこういうチャレンジをしたらいいんじゃないか、ああいうことをやってみたいという気持ちがどんどん高まっていく。そうは言っても身体にはまったくパワーが残っていないので、まさに今、僕自身がこのオフをどう過ごすかについても冷静に考えているところなんです。
―― サポーターの皆さんがどう感じているかはわからないんですけど、僕自身は、まだ負けた気がしていないところがあって。いまだに“勝つべきシーズン”だったと思っているし、だから不完全燃焼という感覚がずっと残っている。で、僕自身がそう思っているくらいだから、慶行さんがこの敗戦を受け入れるのって、かなり難しいことなんじゃないかと思っていました。
いや、それはもう、本当に、僕自身も細江さんと同じ感覚でいるというのが正直なところです。だからこそショックが大きいし、それぞれの敗戦について「どうして勝てなかったのか」をずっと考えている状態で。でも、だからこそ客観的かつ冷静なフィードバックが必要なんですよね。やっぱり僕も人間だから、「振り返りたくない」という思いで頭から消してしまっている部分も絶対にある。でも、そこをちゃんと掘り起こさないといけないとわかっているから、今の自分の感情にフタをして、客観的な意見を耳に入れながら冷静になって振り返る作業が必要なんです。
そうすると、必然的に“取りたかった勝点”のことを考えるじゃないですか。例えば、ホームの秋田戦やアウェイの横浜FC戦は絶対に勝点3を取らなければならない試合だったし、アウェイの甲府戦のように土壇場で追いつかれたゲームもそうです。それだけを考えてもゲームの“締め”の部分に対して違うアプローチをしなければならないとわかる。
逆に、改めて全体のデータを見ると、攻撃のスタッツがいかに充実していたかもわかるんですよ。同じような予算規模のチームであれだけのスタッツを残しているのはジェフだけなので、そこはポジティブに捉えたいし、維持したい。だけど、自分たちがより結果にフォーカスしなければならないと考えると、あのスタッツを諦めなければならない部分もあるだろうなと。
―― 慶行さんの頭の中で、そのバランスを見極めながら自分たちの“次の姿”をイメージしている。
はい。そのとおりです。
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