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#057

2021.9.29 Update!!

1年前とは違う自分。

櫻川ソロモン

櫻川ソロモンが目覚ましい成長を遂げている。
中断明けのリーグ戦は第25節から5試合連続スタメン出場。
最前線で攻撃の作り、守備のスイッチを入れ続ける。
この1年における自身の変化について聞いた。
※取材=2021年9月8日(第28節終了時点)

インタビュー・文=細江克弥


櫻川ソロモン

自分を変えるしかなかった

―― やっぱり昨シーズンのことから聞きたいんですけれど、Jリーグデビューとなった第5節のツエーゲン金沢戦でいきなりゴールを決めて、でもその後はなかなか試合に出られなくて。あの頃って何を考えていました?

ぜんぜんダメでした。態度としても良くなかったと思いますね。実は、あのデビュー戦の前から紅白戦や練習試合で点を取ったりして結果を残していたんですよ。だから「イケるな」と余裕かましちゃっていたところがあって。

でも、僕、思うんですけど、デビュー戦で点を取ることって“ラッキーパンチ”みたいな意味でもよくあることじゃないですか。最初の勢い。でも、実は周りが見えていないし何も考えていないくせに、ゴールを取ったことで少し慢心しちゃうんですよね。僕の場合は完全にそれで、あそこで「イケるな」と思ってしまったことが間違いだった。

―― じゃあ、あのデビュー戦ゴールも「ほらみろ!」という感じだった?

完全にそうです。「やったー!」じゃなくて「ほらみろ!」のほうが圧倒的に大きて。だからヘンに自信をつけちゃったんですよね。それはあの時の僕のダメなところであり、逆に、もしかしたらいいところと言える部分もあるのかもしれないですけど。

―― 試合に出られなくなったことについては?

もちろん、素直なところでは「なんで出られないの?」と思っていました。でも、よく考えればあの後もちゃんと出場時間を与えてもらっていたし、スタメンのチャンスもいくつかあった中で結果を出せなかっただけですから。その事実と向き合えば出られなくなって当たり前だし、今と比べて、あの頃はまだ結果に対する意欲もぜんぜん低かった。だから、仕方ないかなって。

―― それって、今だから言えるのではなく?

まあ、それもあるかもしれないけれど、「なんで?」という気持ちと納得する気持ちが半々だったと思いますよ。むしろ、選手としては「なんで?」が100であるべきかもしれないですけどね。

―― 確かにそうかもしれない。今シーズンに向かうにあたっては、どこかのタイミングで何らかの変化があった?

シーズン終了後の強化部との面談ですね。鈴木健仁GMからは「今のパフォーマンスじゃぜんぜん足りないし、尹監督も満足していない。デビュー戦の頃の闘争心を感じない。このままなら試合で使えないと話している」と伝えられました。

それだけ厳しい言葉をはっきりと言われた時に、それまで「なんで出してくれないの?」とだけ思っていた自分が現実を思い知らされたんですよね。まだ1年目だけど、それでも結果を出さないとヤバいんだなって、その時初めて本気でそう感じたんですよ。今でもはっきりと覚えているくらいめちゃくちゃ悔しかったけど、本当にこのままじゃダメなんだなって。

―― ショックで落ち込むのではなく、目が覚めたというか。

いや、もう、自分に対して悔しすぎましたから。落ち込んでる場合じゃなかったし、確かに俺、ぜんぜん貪欲じゃなかったなと思ったし、過ぎた時間に対してめっちゃ後悔しました。だから、「やらなきゃいけない」って前向きになるしかなかったんです。

―― 鈴木GMに言われたことを一発で飲み込めたということですね。

はい。

―― その瞬間に変わった。

変わりました。心から悔しくて、本当にこのままダメだと思って、その気持ちを持って今シーズンに入りました。シーズン最初はほとんど試合に絡めなかったけど、1人でずっと2部練してましたし、スタッフにたくさん手伝ってもらいながらだけどその努力を続けることができて。

だから、出場時間は限られているかもしれないけれど、たとえ1分でもゴールを決めようとずっと思っていました。それが、結果的には水戸ホーリーホック戦(第9節)のゴールにつながったのかなと。

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