「残り1枠」を懸けたJ1昇格プレーオフ。名古屋グランパスとの準決勝に臨んだジェフは、その力をすべて発揮し切ることなく敗れた。わずかな望みを全員の力でつなぎとめてきたチームの挑戦は、ここで幕切れとなった。
立ち上がりからペースを握ることはできなかった。
スタメンはいつもどおり4-2-3-1の布陣。GKは佐藤優也。最終ラインは右から溝渕雄志、近藤直也、キム ボムヨン、比嘉祐介。ダブルボランチに佐藤勇人と熊谷アンドリューが並び、2列目は右に町田也真人、トップ下に船山貴之、左に為田大貴が位置。1トップにはラリベイが入った。
名古屋は前線からのプレスでボールを追い、ジェフはそのプレッシャーに押し込まれる形で“らしさ”を出せなかった。3分には右サイドの攻撃から船山がファーストシュートを放ったが、GKの正面。その後は両チームとも激しいプレスの応酬となり、主導権はどちらにも転がらなかった。独特の緊張感の中で、静かな立ち上がりだった。
それでも、25分を過ぎると試合が少しずつ動き始める。名古屋は26分にFWシモビッチがヘディングシュートを放ち、佐藤優也がビッグセーブでこれを阻止。一方のジェフは直後の27分、左サイドから為田がクロスを上げ、ラリベイがヘディングシュートを放った。
比嘉が振り返る。
「前回の対戦と違って、相手は前から来ていました。試合の入りからそういう状態だったので、それに対するリアクションに悩んだ部分があったかなという気がします。ただ、自分たちで流れを作ることはできたんですけど、それでも少し遅かった」
それでも、均衡を破る先制点はジェフに生まれる。前半アディショナルタイム。CKを押し込んだのはラリベイだった。
後半の入りも悪くなかった。船山が言う。
「後半の入りも良かったので、“何かのせい”にしたくはないですね。何があっても勝たなければいけない試合だったので。そういう意味でも、難しい試合でした」
名古屋の同点ゴールは61分。最終ラインでボールを奪われると田口泰士に独走され、そのままゴールを許した。選手たちはハンドのファウルを訴えたが、それは認められなかった。
この1プレーで流れは相手に傾いた。しかし、傾きかけた流れを引き戻せなかったことがこの試合の敗因となった。
直後の66分、飛び出したGK佐藤優也のヘディングによるクリアが後方にそれると、それをシモビッチに拾われて失点。勝ち上がるためには“勝利”が絶対条件となるジェフは、65分に為田に代えて清武功暉、67分に船山に代えて指宿洋史、70分に溝渕に代えて北爪健吾と立て続けに交代策を講じるが、ゴールが遠い。
86分に失点。90分にPKで1点を返したもの、アディショナルタイムの90+6分に再び失点。試合は2-4で敗戦という結果に終わった。
試合後、フアン エスナイデル監督は次のように振り返った。
「試合に関しては、最も難しい「先制点を取る」という目的をクリアしました。ゲームをすべて支配できたわけではありませんでしたが、悪くはなかったと思います。同点ゴールが試合の分岐点になったのではないかと思います」
そして、こう続ける。
「今シーズンは本当にポジティブでした。もちろん、目標を成し遂げることはできませんでしたが、ポジティブな1年だったと思います。クラブの中でもいろいろな改革をしましたし、我々の提案に対して順応するのも簡単ではなかったと思います。1年間を通じて苦労していた“安定感”も、最後に出すことができました。今年は本当にいい1年でしたし、来年につながると確信しています」
2017シーズンの挑戦は幕を閉じた。しかし指揮官が力強く語ったとおり、「必ず強くなって戻ってくる」。エスナイデル監督の下、J1昇格を目指すジェフの挑戦は続く。