徳島ヴォルティスのJ2優勝とJ1昇格が懸かった特別なゲームで、ジェフは冷静に、自分たちのやるべきことを貫いた。
スタメンは4-4-2の布陣。GKは新井章太。最終ラインは右から増嶋竜也、新井一耀、鳥海晃司、下平 匠の4人。中盤の底に田口泰士と熊谷アンドリューが並び、右サイドに堀米勇輝、左サイドにアラン ピニェイロが位置。2トップにはクレーベと船山貴之が並んだ。
一方、対戦相手や状況に応じていくつものフォーメーションを使い分ける徳島もジェフと同じ4-4-2の布陣で臨んだ。垣田裕暉と佐藤晃大を前線に並べる2トップに対し、鳥海晃司は「予想していた」と話した。
「垣田選手はクロスに対してニアに走り込むと知っていましたし、佐藤選手は身体が強くて、裏に抜けるプレーもあるとわかっていたので、まずはそういうプレーに対してしっかり対応しようと」
徳島はジェフに勝てばJ1昇格が決まり、他会場の結果次第ではJ2リーグ優勝も決まる。特別な緊張感の中で迎えたゲームは、キックオフから同じフォーメーションを敷く両者の静かな駆け引きが続いた。
最初のチャンスは徳島に訪れた。15分、ジェフの左サイドから攻撃を仕掛け、岸本武流のクロスを垣田裕暉が競り合い、こぼれ球に反応した西谷和希がシュート。これはわずかに枠を外れた。ポゼッションスタイルを確立している徳島は、ボール保持時、右サイドバックの岸本が高い位置を取り、右サイドMFの鈴木徳真が中央に入る“右肩上がり”の布陣に変形する。そのビルドアップに対してジェフがどう守るかがこの試合の大きなポイントだったが、この15分のシーン以降、ジェフは4-4-2の形を崩さないまま素早いスライドでうまく対応し、相手に決定機を作らせなかった。
新井一耀が振り返る。
「サイドに振られた時に(サイドMFの)アランやホリくん(堀米勇輝)、(下平)匠くんやマスさん(増嶋竜也)がいいスライドをして、そこで相手にフリーで仕掛けさせなかったことが良かったと思うし、しっかり限定された状態で中にボールが来ていたのでうまく対応できたと思います」
一方のジェフは立て続けのセットプレーでチャンスを作ると、24分、堀米の左CKに飛び込んだ増嶋がヘディングシュート。枠を捉えることはできなかったものの、高さで上回るジェフのセットプレーは相手にとって脅威だったに違いない。40分、さらに前半アディショナルタイムと2度のピンチを招いたものの、守備陣は身体を張ってシュートをブロックし、試合はスコアレスのまま後半に突入した。
この試合で昇格を決めたい徳島が次々に手を打ってくる中、それでもジェフは努めて冷静に、後半も“やるべきこと”を徹底した。
65分には下平のアーリークロスをクレーベが落とし、飛び込んだ船山がボレーシュート。終盤の86分には下平のクロスから途中出場の山下敬大がヘディングシュートを放った。後半のチャンスらしいチャンスはこの2本だけでほとんどの時間を守備に割いたゲームだったが、首位のチームを相手に、ほとんど決定機を作らせなかったという手応えはあった。尹晶煥監督が言う。
「選手たちには『我々がやるべきことをしっかりやろう』と話しましたし、その部分においては選手たちがしっかり理解してやってくれたと思います。ただ、攻撃に出られなかった部分があるので、それについては繰り返し我々が考えなければならないと思っています」
試合はそのままスコアレスドロー。目の前で相手のJ1昇格を許すわけにはいかないという大きな目標を実現させた一方で、“勝利”を目指す上では大きな課題も感じた90分だった。
守備をベースとするチームの共通認識は、この終盤戦においてようやく強固なものとなりつつある。ラスト2試合はこのベースを少しでも発展させるための大切な時間だ。ボールを奪い、攻撃に転じ、最後にゴールを奪うところにまでこだわる2試合にしたい。