激動のシーズン、そのラストゲームを前に、佐藤寿人が今シーズン限りでの現役引退を発表した。
「小学生の頃にJリーグが誕生し、カズさんとゴンさんのプレーに目を輝かせ、たくさんの夢を与えてくれたJリーグの舞台で選手として21年という長い時間をプレー出来た事、とても幸せな時間でした」
アカデミーから巣立った生え抜きの点取り屋は、やがて日本一のストライカーとなり、最後にまたここに戻ってきて2年間精いっぱいプレーした。Jリーグ史にその名を刻むヒーローのラストゲームだ。最後は勝って、笑顔で送り出したい。
最終節のフクアリに迎えるのは、今シーズンのJ2リーグで旋風を巻き起こしたギラヴァンツ北九州だ。第41節終了時点ではヴァンフォーレ甲府と同勝点の5位につけており、4位浮上の可能性を残してこの最終節を迎えた。今シーズンはJ3からの昇格組ながら一時期は首位に立つ快進撃を見せた強敵だ。小林伸二監督率いるチームは活力ある若手と経験豊富なベテランがしっかり融合し、攻撃的でクリエイティブなチームに仕上がっている。その姿勢は、超過密日程のクライマックスにおいても変わらない。
18得点で得点ランキング2位につけ、一躍チームの主役に躍り出たFWディサロ 燦シルヴァーノはここのところさらに調子を上げている。5試合勝利なしで迎えた第40節のジュビロ磐田戦では2得点、さらに前節のモンテディオ山形戦でも1得点を記録し、鈴木国友とともに破壊力ある攻撃陣を牽引している。2-3で敗れた前回対戦は、攻撃時に変形する相手のフォーメーションに手を焼き、ジェフの持ち味である組織的な守備の弱点を何度も突かれた。同じ手でやられるわけにはいかない。
ジェフは前節、今シーズン最後のアウェイゲームで栃木SCと対戦。尹 晶煥監督はメンバーを大幅に入れ替えて臨んだが、勝利に対する強い気持ちを表現することはできず、ほとんどいいところなく完封負けを喫した。全試合フル出場を続けている新井章太が言う。
「(今シーズンは)勝ち切る試合もありましたが、負けが多いという点ではチームとしての甘さが出たと思います。それを一人ひとりが感じて、これからどう自分たちで取り組んでいくかを知ることができたのは良かったと思います」
1年間かけて積み上げてきた“ジェフの戦い方”を、最後にホームで、しっかりと表現しなければならない。やるべきことは明確だ。
「自分たちの守備の仕方でハッキリやるところはハッキリとやって、余裕のあるときはリスク管理をし、攻撃に出て行くシンプルなところは一つひとつ丁寧にやることが大事だと思います」
キャプテンの熊谷アンドリューは、「不甲斐なさ」を感じたと1年を振り返り、北九州戦に向けてこう話した。
「勢いにのまれないよう、前半からしっかりと自分たちのサッカーができるようにやっていきたい。(ジェフとしては)1年間やってきた自分たちのサッカーを出せるように、失点ゼロで抑えること。(得点の)チャンスは少ないかもしれませんが、それを決め切って勝ち切りたいと思います」
佐藤寿人の他にも、この試合を最後にジェフのユニフォームを脱ぐ選手はいる。このメンバーでできる最後の試合を、しっかりと勝利で飾りたい。
尹晶煥監督
良い選手もいるし、人数的には十分いると思っているのですが、なかなかうまくいかなかったシーズンだと思います。キャンプのときにしっかり作ってきたものを、コロナの影響で失ってしまったので、それを戻すには難しいところがあったなという感じです。
今までずっと試合をやってきて、こんなに負けるシーズンがあまりなかったので、個人的にもけっこう悔しいシーズンでした。強く反省するところは多いので、明日の試合が終わってから休みに入ったときに、そういうところをしっかり反省して、次に向けて準備をしないといけないと思います。選手にとっても今までにないシーズンだったと思うのですが、「お疲れさま」という言葉を伝えたいと思います。
北九州は、チーム全体でやろうとしていることを、この1年ずっとやってきたのが見えます。軽く見る相手でもないし、しっかり結束力もあるチームだと思います。(ジェフにとっては)ホーム最終戦ですし、勝って良い1年の締め方になれば一番良いのですが、それをするのはもちろん、今はケガをしないようにしたい。選手たちが集中して試合に入れば、良い結果にもつながると思います。
新井章太
(今シーズンは)勝ち切る試合もありましたが、負けが多いという点ではチームとしての甘さが出たと思います。それを一人ひとりが感じて、これからどう自分たちで取り組んでいくかを知ることができたのは良かったと思います。戦う意識に関してはシーズンを通して言い続けてきました。自分が言ったことが伝わり始めていると思いますが、まだ足りません。そこはいくら僕が言っても、個人が思わないといけない部分です。そこを高めるというよりも、(それぞれが)自分たちからやっていけたらと思っています。
(北九州戦は)もちろん勝点3を狙います。前回対戦で負けている相手ですし、勝利を目指します。監督の求めている球際や切り替えのところなど、サッカーでは当たり前のところをしっかりと表現できればいいと思っています。自分たちの守備の仕方でハッキリやるところはハッキリとやって、余裕のあるときはリスク管理をし、攻撃に出て行くシンプルなところは一つひとつ丁寧にやることが大事だと思います。相手の攻撃は勢いがあり、多くの選手が出てくるので、試合中に考えてコミュニケーションを取って対処できるかどうかだと思います。
熊谷アンドリュー
チームはこの順位で、なかなか良いシーズンではなかったという感想です。その中で、チームメイトは勝てないときも勝つための行動や言動をしてくれたので、その部分については感謝をしています。ホームで勝ち星の数が少なかったことは、ファン・サポーターの皆さんに申し訳ないと思っています。(好調を維持するためには)自分たちの戦術として、先制点は取られたくない戦い方なので、まずは(失点を)ゼロに抑えることが前提にあります。そこは全員で意識をしてやらないとダメだと思いました。
(自身としては)今年に限っては試合で貢献することができなかったので不甲斐なさを感じました。(キャプテンとして)いろいろな責任が想像以上にのしかかってきていたのですが、それは自分にとっての成長につながったと思っています。
(北九州は)すごく勢いがあります。その勢いにのまれないよう、前半からしっかりと自分たちのサッカーができるようにやっていきたいと思います。(ジェフとしては)1年間やってきた自分たちのサッカーを出せるように、失点ゼロで抑えること。(得点の)チャンスは少ないかもしれませんが、それを決め切って勝ち切りたいと思います。
[前節の布陣/北九州]
[前節の布陣/ジェフ]
[最近5試合の戦績/北九州]
J2第37節 11/28 vs 岡山(H) 1△1
J2第38節 12/2 vs 徳島(A) 1●4
J2第39節 12/6 vs 山口(A) 1●4
J2第40節 12/13 vs 磐田(H) 2○0
J2第41節 12/16 vs 山形(H) 2○0
[最近5試合の戦績/ジェフ]
J2第37節 11/29 vs 磐田(H) 1●2
J2第38節 12/2 vs 東京V(A) 1△1
J2第39節 12/6 vs 甲府(H) 1○0
J2第40節 12/13 vs 徳島(A) 0△0
J2第41節 12/16 vs 栃木(A) 0●1
[過去の対戦成績]
15/05/24 千葉 1-3 北九州
15/09/20 北九州 3-1 千葉
16/06/26 千葉 1-2 北九州
16/08/11 北九州 0-2 千葉
20/08/29 北九州 3-2 千葉