2020シーズンのラストに待っていたのは、勝利と笑顔だった。
スタメンは4-4-2の布陣。GKは新井章太。最終ラインは右から増嶋竜也、新井一耀、鳥海晃司、下平 匠の4人。中盤の底に高橋壱晟と小島秀仁が構え、右サイドに堀米勇輝、左サイドにアラン ピニェイロが位置。2トップにはクレーベと船山貴之が並んだ。
立ち上がりはやや押し込まれたものの、2度のCKをしのぎ、12分の高橋大悟のミドルシュートを新井章太がキャッチすると、流れが少しずつ変わり始める。
13分には相手のビルドアップを奪ってカウンターを仕掛け、堀米が縦パスを送ってクレーベがクロス。船山が落として高橋がシュートを放ち、CKを獲得した。さらに18分には相手のバックパスを奪った船山がGKをかわしてシュート。これは相手DFの懸命のクリアに阻まれたものの、決定機を迎えたジェフが北九州を押し込んだ。2本連続のCKから、20分にはクレーベ、堀米、高橋がペナルティーエリア付近で細かくパスをつないでチャンスを作る。完全にジェフの時間帯だった。
しかし24分、一瞬の隙を突かれてジェフの左サイドからパスをつながれ、北九州の鈴木国友に打たれたミドルシュートがゴールに突き刺さった。3-5-2システムの相手のビルドアップに対してそれまでほぼパーフェクトな守備ができていただけに悔やまれる失点だった。
それでも、この日のジェフは意気消沈することなく自分たちの力で流れを引き戻した。29分にはアラン ピニェイロとのコンビネーションから下平がクロス。飛び込んだクレーベがヘディングシュートを放った。さらに30分には堀米のクロスに高橋が飛び込んで惜しい場面を作る。すると迎えた33分、相手のカウンターを奪って攻撃に転じると、高橋の縦パスから船山がつなぎ、アラン ピニェイロがカットインからシュート。これが決まって試合を振り出しに戻した。
その勢いは、後半に入っても衰えなかった。53分、相手のビルドアップをインターセプトしてカウンターに転じると、堀米がドリブルで運んでラストパス。船山のシュートはポストに当たったが、その跳ね返りを高橋壱晟がダイレクトで押し込んで逆転に成功した。
その直後、北九州は選手交代によって選手の配置を変えたが、ジェフは組織的な守備を崩さず冷静に対応し、攻撃の手を休めなかった。69分には増嶋、途中出場したばかりの山下敬大、さらに船山とパスをつないで逆サイドに展開。アラン ピニェイロのクロスに飛び込んだ増嶋がヘディングシュートを放ったが、わずかにゴールの枠を外れた。
70分以降は北九州にボールの主導権を奪われたものの、ジェフは終始、冷静な対応でピンチを跳ね返し続けた。84分には川又堅碁、佐藤寿人、米倉恒貴を投入して活性化を図り、その勢いを持って最後まで1点のリードを守り抜いた。
試合後には佐藤寿人、田坂祐介、増嶋竜也の引退セレモニーが開催され、それぞれがそれぞれの思いをサポーターに伝えた。
1年を振り返って、尹晶煥監督はこう話した。
「連戦をこなす中で波も激しかったと思います。それをしっかりと調整できなかったことは大きな反省点です。今日が今シーズンの終わりであり、来シーズンの始まりであると思っています。明日から頭を切り替える作業をやっていきたいと思います」
2020シーズンの最終成績は15勝8分19敗で勝ち点53、14位。J1昇格を成し遂げた徳島ヴォルティス、アビスパ福岡との勝点差は「31」。決して小さくないこの差を埋めて1年後の歓喜につなげるためにも、頭と身体をしっかりと切り替えて来る2021シーズンに臨みたい。