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2021 SEASON MATCHES試合日程・結果

流れを変えた選手交代



フクアリにヴァンフォーレ甲府を迎えた2021シーズンの開幕戦は、ドラマチックな90分だった。

スタメンは4-4-2の布陣。GKは鈴木椋大。最終ラインは右から米倉恒貴、岡野 洵、鈴木大輔、安田理大の4人。中盤の底に小島秀仁と熊谷アンドリューが構え、右サイドに福満隆貴、左サイドに岩崎悠人が位置。2トップには大槻周平と船山貴之が並んだ。

互いに様子をうかがう静かな時間は、立ち上がりからしばらく続いた。3バックを採用する甲府に対し、ジェフは最終ラインの高さを調整しながらブロックを作り、入ってきた縦パスに対して囲い込むようなプレスをかけた。相手のビルドアップに対して前から行くのか、それともリトリートとして引くのか。ポゼッションを特徴とする甲府に対してはその判断の精度が大きなポイントとなるだけに、かなり慎重な姿勢でスタートした印象だった。

攻撃面で存在感を示したのは、左サイドに入った岩崎悠人だ。まずは6分、持ち前のスピードを駆使して縦に仕掛けると、これを機に何度かスピード勝負を仕掛けて相手を押し込む場面を作った。もっとも、前半は相手のビルドアップに対するプレスとセカンドボールの回収、さらに奪ってからのつなぎにミスが散見され、うまくリズムを作ることができなかった。

36分には最終ラインからのフィードを相手にインターセプトされ、素早く逆サイドに展開されてピンチを迎える。野津田岳人のシュートがポストに弾かれたことは幸運だった。しかし迎えたアディショナルタイム、相手最終ラインからのビルドアップによって大きく揺さぶられると、荒木 翔からのクロスを中村亮太朗に決められて失点。0-1のビハインドで前半を折り返した。

「流れを変えたかった」と振り返った尹監督は、早めの選手交代で勝負に出た。福満と船山に代えて末吉 塁とブワニカ啓太を投入。この采配が見事に的中し、ジェフは一気に流れを引き寄せる。

迎えた57分、ブワニカとのワンツーで右サイドを突破した末吉のクロスは相手に当たったが、それを拾ったブワニカがクロス。逆サイドに流れたボールに安田が追いつき、ふわりと浮いたクロスをファーサイドに送り込んだ。打点の高いヘディングで合わせたのはブワニカ。プロデビュー戦で値千金の同点ゴールを記録し、ゆりかごパフォーマンスを見せてスタジアムの空気を変えた。

本人が振り返る。

「1回自分でクロスを上げて、ゴール前を通りすぎてしまって。でもミチくん(安田理大)が拾うのが見えたので、切り替えて中に入りました。そうしたら本当にいいボールが上がってきて、いつも練習しているヘディングで決めることができたので最高のゴールだったと思います」

ブワニカはその後も、抜群の運動量でピッチを走り回り、あらゆる局面に顔を出してボールを引き出した。それによってジェフが主導権を握り始めると、右サイドに入った末吉のスピードが活きる。末吉は積極的な縦への仕掛けで相手を押し込み、ブワニカとともにジェフの攻撃を引っ張った。

その空気感に相手が慣れたことで75分以降は拮抗した試合となったが、終了間際のアディショナルタイム、ジェフはペナルティーエリア内でハンドのファウルを取られてPKを与えてしまう。大仕事をやってのけたのはGK鈴木椋大。左に飛んで野津田岳人のPKをセーブし、チームを救った。

尹監督が振り返る。

「後半は選手交代によって雰囲気を変えていこうと思いましたが、うまいこと流れを変えてくれたと思います。最後まで集中してくれていたので、PKのシーンはもったいなかったと思います。(鈴木)椋大がビッグセーブしてくれたことによって、負け試合を引き分けにすることができたことをポジティブに考えられると思います」

言葉のとおり、ポジティブな勝点1だ。浮き彫りになった課題を修正し、次の試合に向かう。