“初心”に戻って手に入れた勝点3だった。
スタメンは4-2-3-1の布陣。GKは鈴木椋大。最終ラインは右から伊東幸敏、新井一耀、鈴木大輔、小田逸稀の4人。中盤の底に高橋壱晟と小島秀仁が構え、2列目は右サイドに福満隆貴、トップ下に見木友哉、左サイドに岩崎悠人が位置。最前線にはブワニカ啓太が入った。
雨と風が強く吹き荒れる難しいコンディションでスタートしたゲームだったが、ジェフは完璧な立ち上がりで主導権を握った。この試合に向けて、尹 晶煥監督は“守備の重要性”をもう一度説いたという。
「今日はメンバーを大きく変えて試合に臨んだのですが、初心に戻って最初からという話をしましたし、攻撃も大事なのですが、守備にもしっかりと力を使わなければという話をしました」
試合開始早々、前線からの激しい守備でボールを奪うと、そのまま押し込んで3本のクロスを放り込み、その流れでFKとCKを獲得し、立て続けにチャンスを作った。6分には左サイドの小田がクロスを放り込み、飛び込んだ福満がヘディングシュート。15分には左サイドでパスを受けた小島がゴールニアサイドにふわりと落とし、そこに飛び込んだ福満がボレーシュートを放った。素晴らしい流れを作ることができた要因について、キャプテンの鈴木大輔が言う。
「自分たちの守備としては入りのところから相手にスペースを与えない守備をしようと心掛けていました。ほぼ自分たちの想定内で守れていたことが、先制点につながったと思うし、みんなの余裕につながったと思います」
値千金の決勝ゴールが生まれたのは20分。最終ラインから右サイドのスペースに縦パスを送ると、追いかけたブワニカが粘ってボール奪取。サポートした福満がグラウンダーのクロスを送り、走り込んだ高橋が見事なフェイントから左足を振り抜いた。
高橋が振り返る。
「練習でやっていた形がうまく出て、思い切って足を振れたのが良かったと思います。あそこのスペースが空くことは戦前のスカウティングでわかっていたので、それをうまく実践できたと思います」
その後もアグレッシブな姿勢を崩さなかった前半はほぼパーフェクトのパフォーマンス。迎えた後半、3人の選手交代によってビルドアップの手法を変えてきた松本に押し込まれる時間が続いたが、サイドを突破された61分、ロングカウンターをフィニッシュに持ち込まれた62分、鈴木国友のシュートを鈴木椋大がブロックした67分のピンチを切り抜けると、尹監督は守備重視のシフトチェンジを決断した。70分、岩崎に代えてチャン ミンギュ、小島に代えて小林祐介、福満に代えて末吉 塁を投入すると、システムを5バックに変更。“残り20分”の戦い方を明確にして勝点3を目指した。
尹監督が言う。
「後半は相手が前に入ってくることを予想していましたし、こちらに体力的な問題が生じることもわかっていました。追加点を狙っていなかったわけではありませんが、守備的なシステムに変更しました」
1点を守り切るための時間は長く感じられたが、ジェフは最後まで集中力を切らさず、また決定的なピンチを招くことなく勝利を掴み取った。尹監督の言葉のとおり、この勝利によって選手たちが、大きな自信を手に入れることができれば、このゲームは今シーズンのジェフにとって大きな1歩になったと言えるかもしれない。