延長戦を含めた120分を戦い抜いても決着がつかない激闘だったが、PK戦の末、川崎フロンターレに敗れたジェフは天皇杯3回戦で姿を消すことになった。
スタメンは3-4-2-1の布陣。GKは鈴木涼大。3バックは右に岡野 洵、中央にチャン ミンギュ、左に新井一耀の3人。ダブルボランチに小林祐介と田口泰士が入り、右のワイドには安田理大、左のワイドには末吉 塁が位置。2列目に船山貴之と見木友哉が並び、1トップにサウダーニャが入った。
格上の相手に対して“やるべきこと”をやり続け、我慢し続けた90分と延長戦の30分だった。キックオフ直後の5分には中盤でボールを奪ってショートカウンターを仕掛け、サウダーニャ、船山、見木とパスをつないで最後は田口がミドルシュート。攻守の切り替えの速い相手に対し、それをうまくかいくぐりながらフィニッシュまで持ち込んだ。
その後はボールの主導権を一方的に握られる展開だったが、ジェフは集中力の高い組織的な守備でピンチを回避し続けた。流動的にポジションを変える相手に対し、“型”を崩されることなく持ちこたえた手応えは小さくない。時間の経過とともに守備の精度は上がり、21分には右サイドにボールを運んで安田がクロス。見木が見事なヘディングシュートでゴールに流し込んだかに見えたが、これは惜しくもファウルの判定となり先制点には至らなかった。
守備の手応えについて、安田が言う。
「みんなが集中して守っていたと思うし、相手も『崩すのが大変だな』と思っていたと思います」
迎えた後半、先制点を奪ったのはジェフだった。
左サイドから攻撃を組み立ててサウダーニャが仕掛けると、斜めのランニングで見木のパスを引き出した船山がペナルティーエリア内で巧みなポストプレー。このリターンパスを受けた見木がDFの股間を抜けるシュートを放ち、これが逆サイドのゴールネットに吸い込まれた。
見木が振り返る。
「自分が前を向いた時に船山選手がいい形で顔を出してくれたので、リターンをもらって決めることができました。ただ、今日に関しては3人でいい連係からチャンスを作ることはできなかったですけれど、サウダーニャが加入したばかりの頃よりは良くなってきていると思います」
直後の59分にPKを与えて同点とされてしまったものの、ジェフは川崎のパスワークにうまく対応しながらカウンターで攻撃を仕掛け、五分五分の駆け引きを続けた。延長戦に入ってからは3バックの右を熊谷アンドリュー、左を高橋壱晟が務める“スクランブル態勢”だったが、むしろ多くのチャンスを作ったのはジェフだった。しかし、前後半15分ずつの延長戦を戦っても決着はつかず、惜しくもPK戦で敗れた。
尹 晶煥監督が言う。
「守備をする時間が長くなると思っていましたし、そういう予想を持って試合に臨みました。やはり(相手との)差はあると感じながらも、選手たちは『できる』という自信を持ってくれたと思いますし、いい勉強になったと思います。この試合を通じて学んでほしいと思います。天皇杯は終わってしまいましたが、しっかり休んで次の準備をしたいと思います」
リーグ再開後の初戦の相手はモンテディオ山形。好調を維持する相手から白星を奪ってはずみをつけるためにも、J1王者と120分を戦って得た手応えを大事にしたい。