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2022 SEASON MATCHES試合日程・結果

厳しい状況下で、価値あるドロー。



「やるべきこと」を貫いた90分だった。

スタメンは3-5-1-1の布陣。GKは新井章太。3バックは右から鈴木大輔、新井一耀、佐々木翔悟の3人。中盤は左ワイドの福満隆貴、右ワイドの西久保駿介が守備時は最終ラインに組み込まれる形で深く構え、アンカーにチャン ミンギュ、その右脇に小島秀仁、左脇に見木友哉という配置を採用した。櫻川ソロモンとサウダーニャは縦関係を作り、櫻川は2列目に入って相手中盤のビルドアップを消す役割を担った。

「ホームでは勝たなければいけない。明日は何とかして勝点3を取るという覚悟を持って準備しているので、期待してください」

試合前日の会見でそう話していた尹 晶煥監督は、このシステムを採用した意図について次のように説明した。

「相手のアンカーの選手を(櫻川)ソロモンがマークすることを基本的な約束事としながら、自分たちが積極的に奪いに行くというより、相手が飛び込んできたところを奪ってカウンターに出ようという話をしました。もちろん、サウ(サウダーニャ)の個人的な特長であるスピードを活かそうとする意図もあります」

山形はポゼッションに長けたチームだ。その対策として講じた一手が見事にハマったことで、ジェフは厳しいチーム状況をうまく乗り切ることに成功した。

まずは2分。カウンターのチャンスからサウダーニャがドリブルで運んでチャンスを作り、5分には左サイドからチャンスを作ってサウダーニャがクロスを入れた。飛び込んだ櫻川のヘディングシュートは惜しくもクロスバーに阻まれたが、15分にも西久保のクロスからサウダーニャがシュートを放つなど、狙いどおりの戦い方で攻勢に出たのはジェフだった。

そうした流れの中で守備が安定し始めたのは、20分を過ぎたあたりだった。4-4-2システムを採用する山形は、ボール保持時に両サイドMFが高い位置を取り、逆サイドのサイドバックは中央寄りの位置を取ってボールを動かす。サイドMFに対しては福満と西久保が最終ラインに組み込まれる形で対応し、サイドバックに対しては3ボランチの両脇、小島と見木が縦のスライドを繰り返してパスコースを限定した。そうして中盤でボールを引っ掛けると、カウンターに転じて敵陣深くまで攻め込んだ。

36分には西久保のロングスローからチャンスを作り、こぼれ球を拾った佐々木がミドルシュート。相手に当たってCKを獲得すると、見事なサインプレーから福満がヘディングシュートを放った。これは惜しくもゴール左に外れたが、前半は“構える守備”を選択したジェフのペースだった。

しかし、後半に入ると流れは徐々に山形へと傾き始めた。山形は両サイドバックを外側の高い位置に配置し、中央にスペースを作って積極的に縦パスを入れてきた。特に2トップの一角としてプレーしていた山田康太が自由なポジショニングで縦パスを受け始めたことで、ジェフは少しずつ全体を押し下げられる形となった。66分、山形が3選手を交代して活動量を増やすと、ジェフはカウンターの糸口さえつかめない我慢の時間が続いた。

尹監督が振り返る。

「ボールをキープする時間は長くなかったので、カウンターができないと判断した時にもう少しじっくりとキープしながら攻撃を組み立てることができれば良かったと思います。そういう時に1人の選手がボールを長く持ってしまうとプレスを受けて奪われます。そういう状況で相手にプレスをかけられるシーンも多かったので、そのあたりはうまくいかなかったと言えるところだと思います」

74分、尹監督は櫻川に代えてブワニカ啓太、小島に代えて篠原友哉を投入。さらに84分にはチャンに代えて風間宏矢、西久保に代えて矢口駿太郎を投入し、最後の最後まで“今日のサッカー”を続けてゴールを守り抜いた。何度かあったチャンスを生かせずゴールを記録することはできなかったものの、苦しいチーム状況の中で充実感を覚える貴重なスコアレスドローとなった。

チャンが言う。

「厳しいチーム状況の中で選手一人ひとりが、足りないところ、いない選手の役割をカバーしなければなりませんでした。それができなければ難しい試合になると思っていたので、自分の本来のポジションがどこであっても、この試合で与えられたポジションで最善を尽くそうと思っていました。急な対応を求められる状況だったので、コーチングスタッフやトレーナーも含めて、みんながひとつになってうまく乗り越えられたと思います」

価値ある勝点1を手に、ジェフは次節、アウェイのツエーゲン金沢戦に挑む。