「準備」を表現して快勝！

前節のロアッソ熊本戦に続いてアウェイで行われたV・ファーレン長崎戦は、ジェフにとって今後の試金石となり得る好ゲームだった。結果は2-0。指揮官も選手も「準備」を勝因に挙げた。

スタメンは3-4-2-1の布陣。GKは新井章太。3バックは右から鈴木大輔、新井一耀、佐々木翔悟の3人。中盤は右サイドに米倉恒貴、左サイドに末吉 塁が入り、中央に田口泰士と熊谷アンドリューが位置。2列目に高木俊幸と見木友哉が並び、1トップにはチアゴ デ レオンソが入った。

「準備してきたこと」を立ち上がりからきっちりと表現することができた90分だったが、試合は思わぬアクシデントから始まった。

2分、左サイドで仕掛けた末吉が相手選手と交錯して負傷。そのまま福満隆貴との交代を余儀なくされた。それでもチームは落ち着いたプレーでリズムを掴み、連動性のある守備でボールを奪うとショートカウンターを連発。相手を押し込んでセットプレーを獲得し、ゴールに迫った。

先制点は10分。田口が右サイドからのFKをゴール前に放り込むと、GKがパンチングで弾いたボールを拾い、パスをつないで左サイドから高木がクロス。ファーポスト際に飛び込んだ佐々木がヘディングで折り返し、待ち構えた新井一耀が豪快なボレーシュートを叩き込んだ。

チーム最多の今シーズン4点目を決めた新井一耀が振り返る。

「今シーズンはセットプレーが大きな武器になっていると感じているし、今日はいいボールがこぼれてきて、あとはシュートを打つだけという形だったので、それがゴールにつながって良かったです」

理想的な時間帯に先制ゴールを奪ったジェフは、冷静な試合運びで時間を進めた。守備時は5-4-1システムでセットしながら、全体が下がりすぎないように意識し、ボールを保持する相手に対して常に前向きの守備を仕掛けようとする。この試合に向けた準備と先制ゴールを奪ったメンタル的な余裕が奏功し、その後の時間帯でも効果的なショートカウンターでチャンスを作った。

23分、佐々木のFKから相手最終ラインの背後に飛び出した鈴木大輔がヘディングシュート。26分には連動したプレスで相手のミスを誘発してボールを奪い、チアゴのクロスから高木がシュートを放った。さらに直後の28分には熊谷のサイドチェンジからチャンスメイク。福満の折り返しに見木が飛び込み、ヘディングシュートを放った。その後もうまく相手の攻撃を吸収し、それを跳ね返しながら主導権を握った。

尹 晶煥監督が振り返る。

「相手をしっかり分析して準備を進めてきましたが、それを選手たちが実行し、攻撃面でも主導権を握ることができました。シュートチャンスを多く作ることができて、早い時間帯に先制点を奪うことができたことが勝因となりました。想定外のアクシデントによる負傷交代が試合を難しくしたところもありますが、代わって入った選手がいい仕事をしてくれたと思います」

前半終了間際に足を痛めた高木はハーフタイムに風間宏矢と交代。後半開始直後の52分にクリスティアーノのクロスから都倉賢にヘディングシュートを放たれるピンチもあったが、58分に左サイドからチャンスを演出すると再び流れを引き戻した。この攻撃の起点となった佐々木は、62分に強烈なミドルシュートを放つなど攻撃面で存在感を際立たせた。

そして迎えた68分、右サイドで多くのパスをつないで相手を押し込むと、一度はボールを失いかけたものの相手のミスを誘発してチアゴが待望の加入後初ゴール。76分のピンチを新井章太のビッグセーブで回避すると、78分にはケガを負った熊谷に代えて小林祐介、米倉に代えて西久保駿介を投入し、さらに83分にはチアゴに代えてブワニカ啓太も送り出して“締め”に入った。

試合終盤はやや押し込まれる時間が続いたものの、ピッチに立つ全員が高い集中力を保って相手の反撃を退け、試合はそのまま2-0で終了した。

新井一耀が言う。

「やっぱり、自信を持って攻撃も守備も自分たちから仕掛けていくことが大事だと思います。相手に合わせるのではなく、自分たちが準備したことを試合で表現する。それが大事だと思うし、それはスタメンで試合に出る選手も、途中から出る選手も共通認識として持つことができたら、自分たちがやりたいサッカーをできると思うので。そこを追求したいと思います」

準備してきたことをきっちりと表現できたという意味において、大きな手応えを得られた90分だった。流れに乗るためにはこれを続けるしかない。天皇杯を含めたホーム3連戦は、今シーズンにおける大きな転機となる可能性を秘めている。