最後の最後にこじ開けたゴール。

ホーム・フクアリにファジアーノ岡山を迎えた5連戦のラストゲーム。髙橋壱晟の劇的なアディショナルタイム弾で勝点3を手にした。

スタメンは3-4-2-1の布陣。GKは新井章太。3バックは右から鈴木大輔、チャン ミンギュ、佐々木翔悟の3人。中盤は右サイドに米倉恒貴、左サイドに末吉塁が入り、中央に熊谷アンドリューと小林祐介が位置。2列目に見木友哉と高木俊幸が並び、1トップにはチアゴ デ レオンソが入った。

互いに相手への対応を探り合う序盤は中盤での激しい攻防が続いた。ジェフがリズムを掴み始めたのは20分前後のこと。相手のビルドアップに対する守備の形が定まり始めると、ボール保持時にはシンプルなロングフィードとサイドチェンジで少しずつ攻勢を強めた。特に最終ラインの左に入った佐々木は正確なロングフィードで縦にも横にも揺さぶりを仕掛け、そのパスで相手を敵陣に押し込むと流れが傾き始める。

22分、右サイドでボールを受けた米倉のクロスからCKを獲得すると、そのこぼれ球を拾った末吉が強烈なミドルシュート。GKにブロックされたものの枠を捉え、28分には左サイドで起点となった熊谷がスルーパスを送り、走り込んだチアゴのポストプレーから佐々木がシュートを放った。さらに、33分には末吉と高木のコンビネーションプレーからクロスを放り込み、米倉が飛び込んで惜しいチャンスを作った。直後のCKではチアゴのヘディングシュートが惜しくもGK正面に飛んだ。

球際の強さと切り替えの速さ。右サイドで存在感を際立たせた米倉が前半を振り返る。

「アグレッシブに戦えていたと思うけれど、もう少し組織的に守備を構築しないと、ボールを動かすのがうまい相手に対しては厳しいと思います。ただ、その中でも一人ひとりが相手としっかり戦って、個人的には僕が入って戦う姿勢をしっかり見せることで何かを感じてくれる人もいると思っていました」

ポジティブな流れのまま迎えた後半も、ジェフの勢いは衰えなかった。

49分にはショートカウンターから米倉のミドルシュートでCKを獲得。立ち上がりの15分間は特に左サイドからの攻撃で相手を押し込み、佐々木と末吉、そこに見木が絡んで積極的に縦に仕掛けた。

66分にはチアゴに代えてサウダーニャを投入。68分には見木とのコンビネーションでボックス内に進入した佐々木が惜しいシュートを放ち、直後の69分にはサウダーニャもシュートを放った。75分には熊谷の縦パスを受けたサウダーニャがチャンスを作り、78分には米倉が積極的なランニングからCKを獲得。“ジェフの時間”が長く続く中でゴールを奪えず終盤に突入したが、この日のチームは相手を押し切ろうとする攻撃の手を最後まで緩めなかった。

尹晶煥監督は81分には米倉に代えて福満隆貴、87分には佐々木に代えて新井一耀、小林に代えて髙橋を投入する。そして迎えたアディショナルタイム。右サイドを攻略した高木がグラウンダーのクロスを入れると、そこに走り込んだのは髙橋だった。

「全員が熱い気持ちを出して戦っていたと思うし、いい内容だったと思います。試合に出て、「何かできれば」と思っていました。監督からは「ボランチとして出るからバランスを取れ」と言われました。ただ、僕自身はそれにプラスして、前に出ていって点を取ってやろうと思っていました」

試合後、岡山の木山隆之監督は「攻守ともに自分たちのプレーを出せなかった」と振り返った。結果は劇的決勝弾によって手にした勝点3だったが、内容では相手を圧倒したと言っていい。尹監督が言う。

「最後の最後にゴールが生まれたということは、我々が集中力で上回ったということだと思いますし、最後のチャンスを決め切れたことが勝利につながりました。選手たちには、自分たちは十分にできる、もっとやらなければいけない、だからもっと勝負に対する意欲を持ってやろうという話を毎日してきました。今日はそういう部分をしっかりと見せてくれたと思います」

意欲を表現したチーム最年長、米倉はこう話した。

「キツい連戦の中でみんながよく戦ったと思うし、結果、こういう勝利を挙げることができたことが大事なんですけれど。ただ、42試合のうちの1試合に過ぎないので、これを続けられるように、同じようなファイトができるようにやっていきたいと思います」

厳しい現実を突きつけられた5連戦だったが、最後にようやく笑うことができた。米倉が言うとおり、これを“続ける”ことが大事だ。