佐藤勇人Yuto Sato
熊谷アンドリューAndrew Kumagai
Vol.300AUG 2020
勇人 これね。どうでしょう? アンドさん。
アン そうですね……。キャプテンを引き受けた理由とも近いんですけれど、最初は夏(2018年)にJ1のクラブからオファーをもらったんですよね。でも、あの時はエスナイデル監督から信頼してもらっていることがわかっていたし、みんなでJ1を目指している時に試合に出ている選手が簡単に移籍してしまったら、少なからずチームに影響が出てしまうと思って。それは、自分にとっても良くないことだと思ったことが大きいです。
勇人 うん。
アン あとは、ジェフのメンバーが好きだったし、結構、ジェフのこと……好きっすね。
勇人 おー。言ったねえ。
アン ハハ。
勇人 でもお前、今、言おうかどうか迷っただろ。
アン ハハハ。
勇人 そうやって恥ずかしさ出すのやめてもらっていい?(笑)
アン 出ちゃってました?
勇人 出ちゃってるし、何なら一番最初にそれ言おうとしてやめただろ。
アン 迷っちゃいました。
勇人 ダセーなー!(笑)
アン すいません(笑)
勇人 でも、あれだよね、やっぱりエスナイデルさんとの出会いが大きかった?
アン そうですね。
勇人 成績だけを見ればエスナイデルさん時代のチームは「うまくいかなかった」と言えるかもしれないけれど、アンドリュー個人としてはすごく大事な時間だったよね。
アン 自分を完全に信頼してくれる監督に出会ったのが、プロに入ってほとんど初めてみたいなもんだったんですよね。それは大きかったです。プレーにも自信がついたし、自分の力をこんなにも引き出してくれる監督がいるのかって。
勇人 あの人の魅力って、いろんな意味での“情”だよね。それが強すぎるからたまにイラッとすることもあるけれど、でも、その強すぎる情がちゃんと伝わるから、外国人監督だけどちゃんと心が通じ合うというか、何を考えているかがわかるというか。
アン 間違いないですね。
勇人 だって、それこそアンドリューにJ1のクラブからオファーがあると知った時の落ち込み方はすごかったじゃん。あれはヤバかったよ。自分が信頼して、チームの中心として使っていた選手にそういうオファーがあることって、ある意味では監督として誇らしいことでもあると思うんだよね。でも、アンドリューがいなくなるかもしれない寂しさに耐えられてなかった。完全に。
アン 自分としては嬉しいですけど……。
勇人 すごいことだよ。だって、あの時、俺が監督室に呼ばれたんだもん。で、アンドについてのいろんな話をした。あの人のそういうところはすごいよね。一度自分が信頼したら、絶対に諦めない。もともと前のポジションだったアンドリューをアンカーのポジションで使って、最初の頃はミスも多かったけど諦めない。「いや、ここは絶対にアンドリューだ」と。
アン とにかく「ミスを怖がるな」と言われ続けました。みんな覚えていると思うんですけれど、最初は本当にひどくて、ミスばかりで、サポーターの皆さんからブーイングされてしまうくらいで。あの頃は勇人さんやエスナイデルさんからいつも励まされていて、「見返してやりたい」という気持ちがどんどん強くなっていって。
勇人 いつかのヴェルディ戦(2017年第14節)が懐かしいわ。アンドリューが失点に絡んで落ち込んで、試合後にメシ行ったじゃん。(キム)ボムヨンと3人で。ボムはずっとふざけてたけど、俺はアンドリューに「1つのミスで落ち込むな」という話をして。
アン あの頃は、ずっとそういう話をしてもらってましたよね。「自信を持て」って。確かに、ミスをしても死ぬわけじゃないし、もっと大胆にやらないととずっと思っていました。
勇人 やっぱり、アンドリューみたいなタイプの選手こそ、「いいから俺によこせ」という気持ちでやらないと。
アン はい。2017年は最初からずっと使ってもらっていたのに試合に勝てなくて、自分のミスによる失点が増え始めて、で、自分が外れて勇人さんが試合に出るようになって。勇人さんのプレーを見ていたら、予測とか、守備のやり方がすごかった。それをずっと見ていて、本当に一から教えてもらった気がしました。個人的には、あの頃の自分がガラッと変わったとは思っていないんですけれど、とにかくものすごい悔しさがあって、「このまま出られなくなったら選手として終わり」という気持ちでやっていたので、それがいい方向に向く力になった気はします。
勇人 でもさあ、こっちはこっちでただ必死だったんだよ。俺だってアンカーなんてやったことなかったし、学びながら、自分の良さをどうやって出すかをずっと考えてた。ただ、プレーしながら思ってたんだよね。「このポジションで俺がずっと試合に出続けることはない」って。
アン マジですか。
勇人 うん。それだけアンドリューのことを認めていたし、ミスをして落ち込む姿を隣で見ていたから。ああ、きっとコイツなら「見返してやる」という“怒りのパワー”で這い上がるだろうなと思っていて。自分では変わったつもりはないかもしれないけれど、そういう“怒りのパワー”を蓄積させていって、それがバーンと弾けた時のアンドリューは確かに変わったよ。マジで無双だったもん。だからこそ、最近ちょっとな(笑)。
アン ホントにそのとおりです。すいません(笑)。これは本当に自分でも納得していないし、本当にもっとやらなきゃいけないって。だから、気持ちの部分ですよね。絶対に。
勇人 3つ目の質問ね。
アン 勇人さん、質問が雑っす(笑)。
勇人 そのくらいのほうが答えやすいだろ。
アン そうですね……。でも、まずはやっぱり、何としてもJ1に上がらなきゃいけないなって。それだけが目標です。そのために、個人的にはさっき勇人さんに言ってもらった1年目のパフォーマンスを上回るくらいのものを見せなきゃって。
勇人 アンドリューには野心を持ってほしいんだよ。日本代表を目指すこともそうだし、逆に、単なるサッカー選手としてだけじゃなく、一人の人間として何を目指しているのかを知りたい。
アン これは本当に、自分、正直なところ27歳までサッカーできるなんて思ってなかったんです。そんなに甘い世界じゃないから。だからこそ思うのは、例えば負けている時期もそうだし、せっかくサッカーをやれているのに楽しめていなくて、それが全然ダメだなって。それがショックで。好きなことをやっているのに楽しめていないって、それじゃあいいプレーができるわけないじゃないですか。だから、今年は絶対に楽しもうと。シーズンが始まる前にそう考えていました。
勇人 楽しむね……。アンドリューって、サッカー好きだもんね。
アン ……意外に(笑)。
勇人 シーズン前のキャンプでボール使う練習があると、めちゃくちゃ嬉しそうだもん。俺なんて「うわ! 始まったよ」くらいにしか思ってないのに、アンドリューは子どもみたいにルンルンな感じでボール蹴ってる。その感じを試合でも出してほしいと思う反面、俺もそうだから強く言えないけど、アンドリューってめちゃくちゃ不器用だよな。
アン 難しいです。ミスをするとミスのことばかり考えてしまって、それが原因でどんどん楽しめなくなるというか。自分でそれがよくわかっているので、だからなんとかしなきゃと思ってるんですけど。
勇人 だから、いつも言っているけど王様でいいんだよ。それくらいの気持ちでいい。もちろんアンドもわかってると思うけど、そんなにうまくなくても、メンタリティーだけ王様みたいな選手だって山ほどいるじゃん。びっくりするくらい多いじゃん。でも、それってやっぱり必要なんだよ。大事な部分なんだよ。
アン わかります。そういう意味でも、やっぱりもっとサッカーを楽しまなきゃって。
勇人 そうだね。まあ、もう少ししゃべってもらいたいところだけど、今日はこのへんにしておいてやるか(笑)。俺はとにかく、お母さんをはじめとするアンドリューファミリーが喜んでいるところを見たい。これは本当に見たい。
アン ありがとうございます。マジで頑張ります。