
#100
2025.11.8 Update!!
日高 大
振り返れば、苦しいシーズンだった。
その時期を乗り越えて躍動感を取り戻した。
ラストに向けて、頭の中は完全に整理されている。
インタビュー・文=細江克弥
うーん……そうですね……。でもまあ、そんなに、長崎戦が終わって、こうやって大一番が続くわけですけど、そうはいってもまだ残り6試合あるということで“そのうちの1試合”という意識が強いですかね。
―― この水戸戦はどの角度から見てもとんでもなく大事な試合だけど、スタンスとしてはいつもと変わらない。
そうですそうです。別に冷静というわけでもないし、めちゃくちゃ燃え上がっている感じでもないというか。もちろん“見え方としてはビッグゲームであることは間違いないんですけど。
―― ということは、長崎戦を落としたことについても、ちゃんと消化できているというか、切り替えられているというか。
もちろんダメージはありました。かなりの。特に前半のうちに点を取れなくて、最後にああいう形で2点目を取られた時は……なんて言うんですかね、表現として適切なのかわからないんですけど「これが長崎か」という感覚になってしまったというか。自分たちにとってはああいう形で失点する、ああいう展開で負けることはあってはならないと思っていたんですけどね。
―― それでもそうなってしまうところに相手の強さを感じてしまった。
はい。1週間の準備の中で消したつもりだったけど、心のどこかには認めざるを得ない相手の強さに対する恐怖心みたいなものがあって、あの2失点目を食らった瞬間に「やっぱりか」と感じてしまった。絶対にダメなんですけどね。もちろんあきらめたわけじゃないし、そのあとの時間も必死に戦ったことは間違いないんですけど。
―― その「やっぱりか」って、相手の強さに対する思いじゃなく、自分たちの弱さに対する思いでもあるのでは?
あー、うん……たぶんそれもあると思います。自分たちの情けなさに対する思いでもある。というか、あの2失点目は完全に自分のせいなので、もっと言えば自分自身に向けた思いでもありました。あの試合でああいうプレーをしてしまう自分の弱さを痛感したし、チームとしても、ほとんどの時間帯で自分たちが主導権を握りながらサッカーをやった中で、点を取り切れない、勝ちを掴み取れない自分たちの現状というか、そういう部分を改めて認めざるを得ないところがあって。“次”に生かさなければいけない要素がたくさんあった試合だったんじゃないかと思います。
―― あの2失点目が「自分のせい」である理由について、もう少し教えてもらえますか?
右サイドでバックパスを受けた翁長選手がファーストタッチで中に入ったところから始まったじゃないですか。その最初の対応が自分だったんですけど、コントロールする瞬間にもっと強く身体を当てに行くべきところだったけどそれができなくて、そのあともワンツーで潜っていった翁長選手についていけなかったのも自分なので。うん……あの失点についてはその部分が大きかったなと。
―― なるほど。上から見ていてワンツーを受けた山崎凌吾選手の動きがかなりうまかったので「やられた」と思ったんだけど、そっか……日高選手の視点で見るとそうなるのか。
いや、俺目線というより、あの一連の流れを整理して「どこが悪かったか」を考えるとあそこしかないんですよね。正直。それから、実は自分の中ではあのシーンのひとつ前にもピンチがあって、その時についていけなかったんです。体力的なところの問題で身体を反応させることができなくて、自分の中では「絶対にこれをやっちゃいけない」と反省した直後のことで。あれだけ短い時間の中でそれを繰り返してしまったことが情けなかった。その思いも合わせて、やっぱりあの失点は自分です。
―― 勝負という意味ではあの2失点目が決定的なものになったからこそ、自分自身の中に感じるものがあった。
うん。そうですね。間違いなく。
―― でも、今シーズンって「それでもよく耐えている」と思うところがあって。チームとしても個人としても“足りなさ”と向き合いながら、結果に対して傷つくことも多かった中で、それでもチームとして踏ん張って、耐えてここまで持ってきた。
うん。わかります。間違いないですね。
―― で、みんなが最近よく言うけれど“ツイている”という側面も間違いなくある。そのあたりについてはどう思う?
そうですね。長崎とやる前からこのタイミングで上位2チームとやれることはめちゃくちゃラッキーだなと僕自身も感じていました。ひとつ落としてしまったけど、すぐに水戸とやれることですぐにそれを挽回するチャンスがあるし、勝てばまた一気に世界が変わるというか。