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#076

2023.9.20 Update!!

慢心するな。勝負はこれから。

田口泰士

連勝はついに「5」に伸びた。内容もいい。申し分ない。
しかしジェフは、まだ何も成し遂げていない。勝負はここから。
慢心はないか。過信はないか。田口泰士は自らに問いかけ続ける。

インタビュー・文=細江克弥


田口泰士

やっとスタートライン

―― どのタイミングでゆっくり話を聞こうか、ずっと考えてたんですよ。

いいっすよ別に。いつでも、ゆっくり……聞かなくても。

―― また、そういうことを言う(笑)。

はは(笑)。

―― インタビューするには最高のタイミングが来たと思ってお願いしたんですけど、どうですか?個人的にはどういう感覚で今のチームと向き合っている?

細江さんが言う「最高のタイミング」って、つまり結果と内容のバランスが取れてきたってことだと思うんですけど、そういう意味ではまったく同じです。自分だけじゃなく選手みんなそう思っていると思うし、そういう感覚を持った上で「一戦一戦」という意識で戦えている。その気持を失わずに最終節まで戦いたいと思っています。

―― 今の手応えって、「このまま全部勝てるかもしれない」と思えるものになってきていますか?

うーん、そこはなんとも難しいところですよね。僕自身もいつも自問自答していて、“今のチームの状態”についてどこまで確信を持っていいのか、持つべきなのかを考えているんです。

めちゃくちゃ正直に言えば、僕自身はまだ、一戦一戦、半信半疑というか、絶対的な自信を持って臨んでいるわけではないんですよ。もちろん「絶対に勝つ」という強い気持ちでピッチに入っているけど、「そんなにうまくいくもんじゃない」という思いもどこかにあって。ただ、個人的なメンタリティーとしてはずっとそんな感じでやりながら、結果的にはずっと勝ってきているんで……。うん……だから、自信を持っていい……とは思いますけどね。

―― 自信はあるけど、何かあった時にちゃんと対応できるメンタリティーで戦いたい。

たぶんそういうことですよね。とにかく勘違いしたくないし、今の自分たちがいい状態にある理由は間違いなく「一戦一戦」というスタンスがあるからだと思うので。僕自身も、もちろんチームも、そこを勘違いしないようにしたいですよね。

―― でも、そのメンタリティーを維持するのって簡単じゃないですよね。たぶん、今でさえみんながギリギリのところでそのメンタリティーを保っているんじゃないかと思うくらい「勘違いしない」って難しい。だって、結果が出続ければ自信が大きく膨らむのは当然のことだし、むしろそうなることで“ゾーン”に入るみたいなところもあるじゃないですか。勘違いしたほうが強いという可能性もあるから、自信を持つことを否定するわけにもいかない。

言っていることの意味はよくわかります。

―― しかも現時点で4連勝で、ジェフにとっては熊本とか秋田とか“いかにも負けそうな相手”にも勝つことができて、だから今、まさにこのタイミングが分岐点なんじゃないかと思っていて。このチームにはどっちが合っているのか。自信満々でイケイケの状態を作ったほうが最後まで乗り切れるのか、それとも、「勘違いしちゃダメだ」と言い聞かせて“一戦一戦”を最後まで貫くのか……いや、でもやっぱり後者か。

うん、僕はそう思うんですよね。自分自身の性格的な問題もありますけど。

―― 泰士さんは基本的にネガティブだから(笑)。

そこなんですよ問題は(笑)。考えちゃうんです。いろいろなことを。

田口泰士

―― でも、今はみんなが同じような考え方をしている気がします。その雰囲気も感じているのでは?

そうですね。そう思います。だからこそ、そういうチームの状態には自信を持っていいと思うけど、連勝しているからこそ、1つ落としただけでガタガタっと崩れることってあるじゃないですか。それも経験しているからこそ“一戦一戦”を強調したいと思うんですよね。でもまあ、何より重要なのはみんなのメンタリティーを揃えることだと思います。一人ひとり確認しているわけじゃないから気になるところではあるけど、僕自身は「まだまだ」と思っているし、みんなも同じマインドを持っているんじゃないかと思えてはいます。

今はまだ、前半戦に失った勝点を必死に取り返しているだけ。「やっとスタートラインに立てたかな」という段階でしかないので。「4連勝!」という感覚より、そっちですよね。

―― そういう雰囲気は、ミックスゾーンで表情を見ているだけでも伝わってきます。勝ってもぜんぜん浮かれてないし、みんな、何回勝っても「次が大事」と建前じゃなく本音で言ってる感じがちゃんとある。聞いているこっちとしては「もう少し喜んでもいいんじゃ」とか思うんですけど。

みんなが自分に言い聞かせてるんだと思います。慢心や過信にならないようにって。それがあるから日頃のトレーニングが引き締まったものになるし、監督やコーチもそれをわかっていて。だからこそ、本当に毎日のように“強度”や“質”に対する意識を強く持たせようとしてくれますからね。そういうサイクルが結果につながっているんじゃないかなと。

―― それをスタンダードにしたい。

それはもう、監督がずっと言ってきたことですよね。レベルの高いスタンダードを作らなきゃいけないって。それを身体で覚えなきゃいけないって。で、それを監督やコーチに言われなくても、選手が自分たち自身でやれるようにならなきゃいけないし、そういうチームが強いと思うので。ここまで引き上げてくれた監督やコーチの想いに、選手たちが応えなきゃいけないと思いますね。

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『自分たちに足りなかったもの』

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