#080
2024.04.02 Update!!
高木俊幸
2023シーズン、32歳になったベテランアタッカーは、ひとり悩んでいた。
それでも、心が折れかかった時にかけられた言葉に救われた。
自分を変えて、もう一度勝負する。熱い気持ちを、前に進めて。
インタビュー・文=細江克弥
―― 現時点で第3節まで消化して、ジェフは2勝1敗。ちばぎんカップから始まって1カ月程度が経過しましたけど、高木選手自身は今どんなことを感じている?
コンディション的にはキャンプ前からいい状態でした。オフシーズンもかなり身体を動かしていたので、キャンプも含めてかなりいいコンディションで過ごせていたと思います。ちばぎんカップでは久々にちゃんと試合に出ることができて、自分としては“狙いどおり”という感覚でした。でも……。
―― ちょっと離脱してしまうんですよね。
体調不良で離脱して。ちばぎんカップがいい感触だったので、タイミングとしては痛かったですね。でもまあ、フィジカル的にはそれほど大きなダメージもなく早めに復帰することができたので、それはよかったかなと。もう1回作り直さなきゃという感じではありましたけど、全体的にはそんなに悪くはないかなと思います。
―― ちばぎんカップのパフォーマンスには、やはり手応えがあった?
そこはかなり強い意識をもって狙っていたところでもあるし、結果を出してそのまま波に乗りたいと考えていたので、気持ちが入っていました。だからこそ、あのタイミングでポジションを空けてしまったことは、やっぱり悔しかったですね。自分のポジションはいいメンバーがそろっていて競争が激しいので、一度ポジションを空けてしまうと厳しい。今回については自分に対して「持ってないな」と思いましたし、でも「仕方ない」と割り切るしかないので、次にチャンスをもらった時にちゃんと数字として結果を残さなきゃいけないと。
―― ちばぎんカップを見て、正直、その仕上がり具合というか、キレのあるパフォーマンスに驚きました。今シーズンに対する気持ちが伝わってきたというか。
昨シーズンは、単純に自分の実力不足を突きつけられたと思っているんです。ケガをしてしまうことも含めて実力不足だし、年齢を重ねるにつれて必要になってくるケアを怠っていたわけじゃないけれど、結果的にはケガが重なってしまって、そこの部分に対する努力も足りなかったんだと。だから、全体的にうまくいかなくて、チームに入りきれなかったですよね。でも、夏になる前くらいから、ケガから復帰して試合に絡むようになって。
―― そうでした。
あの時期、ちゃんとチャンスがあったんですよ。何試合かに1回、必ず自分が決めなきゃいけないチャンスがあって。誰が見ても「決められるだろ」というところで、それをことごとく外してしまって。で、少しずつ、自分の中でメンタル的な焦りみたいなものが出てくるんですけど。
―― 確かにありました。ビッグチャンスがいくつか。
そういうものに、自分が勝てなかったんですよね。失敗することで余計に考えるようになって、でも、そういう状態ってFWとしてはぜんぜん良くない。「これじゃダメだ」と思いながらも、それを抜けられなかった。
―― 確かに、「それは決めてほしい」と思うシーンがいくつかありました。クロスのシーンもそう。「高木だったらもっと高い精度のボールを蹴れるのでは」と思っていたけど、でも、それって本人が一番よくわかっていることだから気になっていたんです。本人は何を感じているんだろうなと。
まさにそれです。シュートもクロスも。「自分だったら」という思いが自分の中にあって、“次の1本”に対して余計なことを考えるようになってしまったというか。いい時って、やっぱりほとんど無心じゃないですか。
―― わかります。
でも昨シーズンの自分はチャンスの瞬間に「来た!」という感情が自分の中で騒ぐのが抑え切れなくて、つまり、単純にメンタル的なところで自分に勝てなかったんですよね。それが大きかった。そもそも自分自身、キャリアの中でそんなにたくさんのゴールを決めてきたわけじゃないけれど、自分の中では、“大事な場面”ではちゃんと決められる勝負強さみたいなものだけは持っていた気がしていたんです。だからこそ、数は多くないけど、自分の中でも印象に残るゴールはちゃんとある。それが多い選手だと自分では思っていて。
―― だからこそ、それができなかったことでメンタルが乱された。
なんかもう、シンプルにそういうプレッシャーに負けて、自分を見失ってました。そのことを、自分で自覚していました。