#084
2024.08.02 Update!!
佐々木 翔悟
鈴木大輔の戦線離脱によって、チームは決して小さくない影響を受けた。
昨シーズンから約1年、その隣で急激な成長を遂げてきた佐々木翔悟は、今、「自分が変わる」ことの重要性を強く自覚している。
インタビュー・文=細江克弥
―― まず初めに、どうしても聞きたいことがあって。
はい。どうしたんですか。
―― 天皇杯のFC東京戦。呉屋(大翔)選手が決めた2点目あったでしょ?
はい。
―― あれ、中盤で引っ掛けて、(小林)祐介選手が運んで左の(高木)俊幸選手にパスを出した瞬間に、翔悟選手もスタートを切って追いかけたじゃないですか。
ああ、そうでしたね。
―― 結果的にはそのランニングが呉屋選手のゴールにつながったわけですけど、見ていて「え?」と思ったんですよ。翔悟選手が前に行かなくても人数は足りていたし、俊幸選手の真後ろにつくようなコース取りで、距離も近くて、外に回るわけでも内側に入るわけでもないから「そこ走るの?」と思って。そしたら本当にそこにこぼれてきて、結果的には素晴らしい判断で“次”の展開を生んだ。あのシーン、何をどう判断したらああなったのかとずっと気になっていて。
ああ、なるほど(笑)。いや、最初はトシくんの外側を回ろうかなと思ったんですよ。走り出してから途中までそう思っていたんですけど、トシくんが自分で仕掛けるとわかった瞬間にスピードを落として、自分の感覚ではその場にステイする感じだったんです。もちろん、トシくんの邪魔をしないようにという意味なんですけど。
―― こぼれてきた瞬間の思考は?
ちょっと迷いましたね。ニアを抜くシュートを狙うか、事故みたいなゴールにつながりそうなクロスを入れるかで。そしたら、ニアのところに立っていた森重(真人)選手がマイナス方向のコースを消そうとするポジションを取ったんです。で、ニアが空いたから、そこに速いボールを入れたらイケると思いました。
―― イケるというのは、こぼれ方として?それとも直接シュート?
いや、あれはクロスで、できれば(呉屋)大翔くんに一発目で合わせてほしかったんです。結果的にはGKが弾いてそれを押し込んだ形になりましたけど、自分としては、大翔くんならあの速いボールに合わせられると思っていたので。で、もしもそのボールが抜けてしまっても、逆サイドに(田中)和樹が詰めてくれるだろうなと。
―― ああ、じゃあ完全にコースが見えていたんですね。蹴る瞬間に。
はい。
―― 森重選手のポジショニングを見て、そのコースが見えた。
そうです。通ると思いました。
―― なるほど~。僕はとにかく走るコースとサポートの位置がおもしろいなと思って、そっちばっかり気になっちゃって。俊幸選手が仕掛けている最中も翔悟選手の位置ばかり目で追っちゃったんですよね。そしたらそこにボールがこぼれてきたから驚いた。しかも、ほとんど迷わずに次のプレーを選択して、それがゴールに直結したから「すごい!」と口に出してしまった(笑)。
確かに、自分でもいい判断ができたと思います。あの場面は僕の近くに(田口)泰士くんもいたので、リスクを考えれば、もしかしたら自分がサポートに行かなくても良かったかもしれないんですけど。でも、行けば得点の確率が高まることは間違いないし、行かなければその確率は下がると思うので。だから、自分の中では“迷わず行く”でしたね。
―― リスクについてはどのくらい頭の中にある?
もちろんあります。そこは場面ごとにある自分のマーカーとの駆け引きなので。でも、自分が前に行ったら相手はついてこなきゃいけないじゃないですか。その駆け引きをどう考えるかですよね。場面ごとに。でもまあ、自分は迷うくらいなら行くっす。やっぱり。
―― その姿勢が翔悟選手の最大の特長ですよね。これは前に出るかどうかだけじゃなく前方へのロングフィードも同じことで。“見えているならリスクを恐れずに蹴る”という感覚だと思うんですけど。
自分でもそう思うし、意識しているところではあります。ただ、自分の場合、ロングボールを蹴って1回、2回ってミスっても、「3回目で通しちゃうからすごいよね」みたいなことをよく言われるんですけど、それはちょっとピンとこないところがあって。
―― というと?
自分は、3本とも全部通せると思っているから蹴っているので。
―― なるほど。
3回目の質がすごいわけでも、2回失敗してるのに3回目を蹴れる気持ちが強いわけでもなく、普通に3回すべて成功すると思っているし、同じように見えているから蹴っているだけで。つまり、単なるミスなんですよね。それをなくさなきゃ意味がないし、サッカーなんだから「見えたら蹴る」という感覚って普通でしょと。
―― 言ってることはよくわかります。感覚的に人と違うところはあるかもしれないけど、自分にとってはごく普通のことだと。
そうですそうです。まあ、そういう感覚ってみんな持っていると思うんですけどね。