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#086

2024.10.03 Update!!

ピッチに立つ責任。

鈴木 椋大

第27節いわき戦の完敗はチームにとって大きなターニングポイントだった。
続く天皇杯・札幌戦から、ゴールマウスは鈴木椋大に託された。
そこで彼が表現しているのは、プロ選手として、ピッチに立つ責任だ。

インタビュー・文=細江克弥


鈴木 椋大

本来の姿に戻った

―― 昨シーズンに引き続き“この時期に話を聞きたくなる鈴木椋大”ということで、よろしくお願いします(笑)。

ありがとうございます。そういえば、昨シーズンもこのくらいの時期に話しましたよね。

―― そうそう。GKというポジションの難しさを改めて実感しますよね。本当に、いつチャンスがめぐってくるかわからない。

確かに。そういう見方もできるかもしれないですね。

―― チームは第32節山口戦に勝利して、ひとまずJ1昇格プレーオフ圏内の6位に入ることができました。ここからまた仕切り直して最後の勝負というタイミングだと思うんですが、今のチームに対して、椋大選手は何を感じていますか?

流れは間違いなく良くなっていると思います。もちろん試合に出始めたことで自分自身の流れも良くなってきているし、そういう意味では、流れが悪かった時期と比べてトレーニングの雰囲気から変わってきているという実感もありますね。正直、その時期ってちょっと無理にでも声を出そうとか、無理にでも盛り上げようという雰囲気もあったんですよ。でも、今はもうぜんぜんそういう感じじゃなくて。プレッシャーがかかる試合が続く中で、トレーニングでは素晴らしい強度を維持できていると思うし、ゴールに立っているだけでみんなの自信が伝わってくる。だから、かなりいい方向に進んでいると思っています。

―― つまり、純粋に目の前のトレーニングに集中できているという感覚がある。

ありますね。でも、だからこそ「もっとやらなきゃ」と思うところが強くなるところもあって。いい状態だからこそ、それをとことん突き詰めないと最後の最後まで戦い抜けない。昨シーズンのメンバーはそれをよくわかっているし、やっぱり、プレーオフでの悔しい思いはまだちゃんと残ってますから。あれだけチームの雰囲気が良くても勝てなかったんだから、プレーオフは簡単じゃない。そういうことをちゃんと意識しながら最後まで戦わなきゃいけないし、現状だって、何ひとつホッとできる要素はありません。相手がどうこうじゃなく、とにかく自分たち。上を見続けてやるしかないし、とにかく目の前の1試合に集中して戦っていくしかない。それができれば、結果はついてくるんじゃないかなと思っています。

―― そういう意味で、昨シーズンの経験が生きてくるのはたぶんここからですよね。そりゃあ順位は気になるけど、試合に臨むメンタリティーが左右されるほど気にしてるわけじゃないというか。

ですね。まずは全力でその試合を戦うだけ。順位を気にするのは試合が終わってからでいい。そういう感覚はちゃんとあると思いますよ。

―― でも、特に勝った試合の直後はすぐにスマホ見ちゃうでしょ?

ですね(笑)。順位もそうなんですけど、ほら、最近はうちのエースが得点王争いをしてるんで、それも気になっちゃって。首位を争っているいわきFCの谷村海那選手が点を取ったら「谷村が取ったぞ!」とみんなで笑ってます。そういう雰囲気になるのは、もちろん自分たちが勝った試合の直後だけですけどね。

―― なるほど(笑)。それもチームを盛り上げる“ネタ”のひとつになるんですね。面白い。

そうなんですよ。最近は「覚醒した」というより、「本来の飛絢に戻った」という感じですよね。また点を取り始めて自信もつけているだろうし、やっぱりそれはチーム全体としてもすごくポジティブなことですから。ロッカールームでもイジられてるくらいなんで、飛絢はいいネタを提供してくれていると思います。

―― 小森選手のゴール量産って、つまりチーム全体がポジティブに変化したことを象徴する事例だと思うんですけど、具体的には何がどう変わったと思いますか?

自分の中で思っているのは、やっぱり天皇杯をあれだけ戦えたことが大きかったということです。これはいい意味で、リーグ戦に出ていたメンバーと天皇杯に出ていたメンバーとでは、やっているサッカーが違った。同じチームだし同じサッカーを志向しているけど、表現されるものは同じじゃないところがあったと思うんです。でも、それって当たり前ですよね。選手それぞれに特徴があるわけだから、ピッチに立つ選手が違えば、チームとして同じ方向を目指しているとしてもそのチームのサッカーが変わる。

―― それがうまく混ざり合ったということか。

そうなんですよ。天皇杯である程度の結果を出すことができたことで、チーム内のポジション争いが激化したじゃないですか。実際に(品田)愛斗やおかにー(岡庭愁人)、(松田)陸、エドゥ(エドゥアルド)あたりは天皇杯をきっかけとしてリーグ戦にも出るようになったし、つまりキャラクターの違う2つのチームが融合したような形になった。で、どっちのいいところも表現できるようになったことで、チームが少しずつ変わっていった。結果的には、それが飛絢が“本来の姿”に戻ることにつながったんじゃないかなと。

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