JEF TALK!ジェフトーク!

#65

「小林新監督とともに。」鈴木健仁GM

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#65 小林新監督とともに。

求めているのは個ではなく組織の強さ



―― チームとして確固たるスタイルを確立しなければならない理由は、順位表の上位に並ぶチームを見れば明らかです。今シーズンの昇格チーム、あるいはJ1参入プレーオフに出場した4チームにはいずれも明確なスタイルがあって、直接対決ではそこに大きな差があると痛感しました。しかも、そのスタイルを拠りどころとして、クラブ全体が一体感を手に入れることができる。そういう状態を実現したチームが、昇格の可能性を最後までつないでいる印象です。

そのとおりだと思います。監督が掲げるスタイルがあって、それを、選手、スタッフが信じて最後まで戦えるかどうか。表現するためのサポートができるかどうか。もちろん僕たちもそれを模索したけれど、この3年間では、それを実現することはできませんでした。だから、これまでとは別のトライ、別のスタイルの獲得に挑戦しなければならないと思っています。

―― ジェフについては「決定力不足」についてよく指摘されますが、それよりも大事なのは前提として存在する「スタイルの確立」であるということですよね。

「決定力」はもちろん大事です。それを獲得するためには、個としてとんでもない決定力を持った選手を保有するか、決定的な場面を多く作るかしかないですよね。チームとしてトライしなければならないのはやはり後者で、ジェフの課題ももちろんそこにあります。2022シーズンまでのジェフは、全体の重心を下げることで守備面の安定を獲得したものの、そこから先、重心を上げて相手ゴールに迫る攻撃を表現することはできませんでした。

尹監督とは何度も話し合いました。その結果としてシステムを変更したり、3バックの両脇の選手が積極的に攻撃参加したり、ボランチの2人がゴール前に飛び込んだり、それまでとの違いを表現することは部分的にできたと思います。ただ、メンバーによって差が出てしまったり、相手によって表現できなくなってしまったり、確固たるスタイルと言えるまでの精度に仕上げることができなかった。例えば、誰の目にも明らかな課題として、1トップの選手が孤立してしまう時間、2シャドーの選手がうまくボールに絡めない時間はかなり長かったですよね。

―― そう思います。シーズンが進むにつれて選手たちが危機感を覚えていることが伝わってきましたし、多くの選手が「もっとリスクを冒さないと」と口にするようになりました。

頭の中を整理するのが難しかったと思います。尹監督のサッカーが守備を特長とすることは理解しているし、それが機能した時に結果を残してきたこともよくわかっている。でも、ポジションを下げてばかりでは前に出られないし、“その先”を何とかして改善しなければ昇格争いに絡めるチームにはなれない。そのことも痛感している。選手たちは皆、ちゃんと同じ方向を向いて気持ちをひとつにしていたと思います。でも、そういう葛藤がある中で、ピッチの上で、局面ごとのイメージを共有することができなかった。自分たちがボールを持った時にどのように相手を攻略するかを共有できなかった。

―― もっとリスクを冒したいという思いは共通しているけれど、守備のベースを崩したくないからなるべく最小限のリスクで効果的に攻めたい。その「なるべく最小限のリスクで効果的に」の部分に明確なスタイルがあればもっとうまく戦えたけれど、ジェフにはそれがなかった。

そのとおりです。尹監督のサッカーは、基本的には個の能力によって解決しようとする部分が大きいことを特徴としています。責任を明確にすることでそれぞれの個が成長するというポジティブな側面があるし、個の能力で局面を解決できるチームを作れば、圧倒的な強さを発揮できると思います。ただ、今のジェフには、メンバーの顔ぶれを見て「戦力的に相手を上回る」と思えるチームを作れても、「戦力で相手を圧倒する」と思えるチームを作ることは現実的ではありません。そこまでの予算的な優位性はない。だからこそ、決定力で圧倒するストライカーを獲得することより、より多くの決定機を作れるチームになることを目指さなければならないんですよね。そのためには、組織としてのスタイルが必要であると思います。

―― ただ、チームとしてのスタイルが明確にならない中でも、可能性を感じる瞬間は何度もありました。大事な試合さえ勝てれば、チームが一気にまとまってポジティブなサイクルに入れるかもしれないと。

同感です。僕自身もその可能性を感じていました。自分の中で「ポイントだった」と振り返るのはアウェイの大分トリニータ戦(第24節)です。先制点を取って、追加点を取って、内容的にも素晴らしかったにもかかわらず、そこから3失点して逆転負けしてしまった。試合後、「このままでは厳しい」という予感がありました。「あの試合さえ勝てていれば」と強く思うゲームでした。

―― 尹監督が「大事な試合を取れなかったこと」を強く悔やんでいたのは、まさにそういう部分ですよね。勝点はもちろんですが、「この試合に勝てばさらに強い一体感を得られるかもしれない」と思うタイミングが何度もあったにもかかわらず、それをことごとく逃してしまった。

何によってチームとしての一体感、クラブとしての一体感を獲得するかは今のジェフにとって本当に大きなテーマであり課題です。僕自身もそれと向き合い続けているけれど、改めて「これほど難しいことはない」と強く思います。

ただ、大事な試合を落としてしまう勝負弱さの原因を「スタイルのなさ」だけに求めしまうのは乱暴ですよね。まずは単純に、日々のトレーニングやチーム内の競争における厳しさと激しさ、タフさが足りないのだと思います。僕たちも改めてそこを見つめ直す必要があると考えていますし、リーグ戦終了後のわずかな期間でしたが、小林慶行新監督の下で強度を高めるトレーニングを実施しました。わずか3週間足らずでしたが、その効果は間違いなくありました。