外国籍選手の動向に見るチーム編成の反省点
―― 小林慶行新監督の話をする前に、もう少し確認したいことがあります。シーズンが終わって、現時点で外国籍選手、特にブラジル人選手は3人とも契約満了となることが発表されました。それも「うまくいかなかったこと」のひとつだと思いますが、それぞれにどのような背景があったのでしょう?
まず、リカルド ロペスについては、ケガによる約1年の長期離脱があったことを理解した上で、それでもコンディションさえ取り戻せれば、きっと大きな力になってくれる。それだけの力があると。
―― その意図は理解できました。J1昇格の可能性があったからこそ、それを少しでも大きく膨らませるための最後の一手だった。たとえ最後の数試合しかまともにプレーできなくても、たった1得点が決め手となって昇格を引き寄せるということもあり得る。それくらい強気の勝負に出た賭けだったわけですよね?
「賭け」と言ったら選手に失礼かもしれませんが、確かにそういう狙いを持っていました。結果的にそうならなかったことを申し訳なく思っています。
―― 契約延長につながらなかった理由はどこにありますか?最後の最後に、「やっぱりすごい」と感じさせるプレーはいくつも見せてくれた気がします。
新シーズンに関してはチームを別の方向性に進ませることを議論のベースとしていたので、それを踏まえて契約を延長しないと判断しました。おそらく、トップコンディションさえ取り戻せばどんなチームであっても絶対的に必要な能力の持ち主であることは間違いありません。ただ、現状のコンディションから判断してその部分の不透明性を解消することができなかった。だから契約満了という決断をしました。
もちろん契約上の理由もあります。過去の経歴からもわかるように、コンディションさえ万全ならJ2リーグでプレーするようなタレントではありません。その部分の駆け引きをクリアしつつ、コンディション的な不透明性を抱えたまま「来シーズンも」と踏み切るのは難しかった。そこは思い切って判断するしかありませんでした。
ダニエル アウベスについては、能力的にも、ポジション的にも、「経験不足さえ補えれば大きな力になってくれるはず」という期待を込めて獲得しました。出場機会をつかむまでに少し時間はかかりましたが、右肩上がりだったパフォーマンスや出場時間の伸び率を考えれば及第点の出来だったと思います。その点を考慮した上で、改めて来シーズンの契約について考えた結果としてやはり違う道を進もうと判断しました。
チアゴ デ レオンソについては、残念ながら期待よりもうまくハマらなかったと言わざるを得ません。これは編成における大きな反省材料として、チームの力になれなかったことを申し訳なく思います。どうにもならない理由で合流が遅れてしまったとはいえ、やはり、外国籍助っ人として、ストライカーとしての違いを見せる存在でなければならなかったと思います。昨年から外部の企業と提携して、その力を借りながら外国籍選手の能力を見極めて戦力に加えるということにトライしたのですが、「うまくいかなかった」と言っていいと思います。
―― 新型コロナウイルス感染症の陽性者と故障者が続出するなど、編成面においてもすごく難しい1年だったと思います。
そうですね。やっぱり、新型コロナウイルス感染症と故障者の因果関係も少なからずあると思っています。もちろんトレーニングやコンディション管理の問題もあったとはいえ、ケガ人の続出を招く要因のひとつになってしまったと考えています。公表できるものではありませんが、コロナにかかってしまった選手が筋肉系のケガをしやすいというデータもあるそうです。
そうは言っても、チームとしては“起きたこと”に対応するしかありません。例えば、センターバックの選手が相次いで離脱してしまった時期は、ピッチに立てるメンバーで何ができるか、あるいは田邉秀斗の獲得のように編成担当として何ができるかを考えて精いっぱい対応したつもりです。
一方で、そういう時こそ、それまでピッチに立てなかった選手が出場機会をつかむようになりましたし、結果を残して活躍してくれた選手もいました。尹監督も含めて、ある意味では「できることをやるしかない」と割り切ることができていました。ネガティブな感情を持たずに、前向きに対応することができていたと思います。