JEF TALK!ジェフトーク!

#111

「次のステップ。」カルメレ トレス監督

10

16

#111 次のステップ。

攻守の改善アプローチ

―― 少し話を戻したいんですが、カルメレ監督にとっての1年目、昨シーズンの戦いについてはどのような分析を?

シンプルに「守備」と「攻撃」に分けて話しましょう。

まずは守備についてですが、今シーズンを迎えるにあたっては方法論を根本的に変えなければならないと思っていました。自分たちのプレーモデルに対して起こり得る守備の局面、その1つひとつの振る舞いに大きな変化を起こさなければならないと。

具体的に言うと、昨シーズンは徹底的にゾーンディフェンスの原則を落とし込もうとしました。そのために低い位置でブロックを作るところからスタートして、そのブロックの重心を少しずつ上げていこうと。ただ、サッカーは常に攻守一体なので、攻撃面でトライ&エラーを繰り返している状態なら必然的に守備のブロックが下がってしまいます。

―― どうしても構築過程にあったボール保持の局面でミスが生じてしまうから守備ブロックが下がってしまう。低い位置から攻撃をスタートするからなかなか相手ゴールに近づけない。そのあたりのジレンマを抱えながら、でも、昨シーズン終盤はかなり、守れるチームとしての完成度が上がっていましたよね?

そうですね。おっしゃるとおり、ある程度は守れるチームになったと思います。でも、だからこそチームをもう1段階引き上げるためには“奪う守備”をしなければならなかった。

昨シーズンの守備ブロックはコンパクトさをひとつのコンセプトとしていました。相手にとって有効なスペースを消すために、なるべく選手間の距離を縮めてコンパクトな構造を維持しようとしたのです。相手にサイドチェンジされても、コンパクトなまま組織を横にスライドして対応する。



―― 昨シーズン最終節の三菱重工浦和レッズレディース戦はその真骨頂と言えるゲームでした。“通させない守備”としての完成度はかなり高かったと思いますし、チーム全体がイメージを完全共有していることが伝わってきて興奮しました。おそらく、あの意識やイメージを維持したまま、より効果的に攻撃につなげるための“奪う守備”に変えようとしたわけですね。

そのとおりです。ブロックを作る選手間の距離を広げました。その間にパスを通されても前方向へのアタックと後ろ方向へのプレスバックによって“奪う守備”を表現したいと考えました。

もちろん、それによって局面ごとの振る舞いは大きく変わります。例えばサイドハーフのポジション。昨シーズンまでは相手のウイングバックのポジションを意識しながらカバーリングできるポジショニングを基本としたのですが、今シーズンはもう1つ前の位置に固定するような立ち位置を取らせています。WEリーグは最終ラインを3枚でビルドアップするチームが多いのですが、怖がることなくサイドハーフをぶつけて3対3の状態を作り、そのまま奪いに行こうと。もしもそのプレスを外されてサイドのスペースに運ばれたとしても、最終的にはセンターバックのカバーリングによって対応する。そういった形で「ひとつ前で奪いに行く」ことを守備のテーマとしています。

―― 攻撃についてはいかがですか?

昨シーズンは、ビルドアップの時に、まずはサイドを起点として人数をかけて縦に仕掛けるか、逆サイドへの展開で相手を揺さぶるかという選択肢が中心でした。つまり、中央から相手を崩すというパターンはほとんど表現できなかった。最前線のターゲットに当てて縦に踏み込むとか、中盤での中央からの組み立てというところですね。シーズン途中から少しずつできるようになってきていたとはいえ、そこでボールを奪われてピンチを招くシーンも多くありました。

今シーズンに入って取り組んでいるのは、この中央エリアで相手を動かし、間延びさせてスペースを生み出すことです。相手最終ラインに対するFWの駆け引きによって中央エリアにスペースを作り出し、そこを使ってボールを前進させようと。獲得した新戦力のほとんどは、そうした攻撃を実現するために適したタレントとして選んでいます。井上綾香も平井杏幸もそうです。