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#105

2026.5.20 Update!!

ユーティリティーの生き様。

前 貴之

相手を見極める

―― 個人としては差があるかもしれないけれど、チームとしては十分に戦える。そういう状態を開幕当初のスタート地点として、そこからいかにして勝利という結果につなげるかですよね。でも、もちろんそんなに簡単じゃない。

そう思います。ただ、結局のところ“個”も“組織”もつながっていて、両方を同時に高めなきゃいけないじゃないですか。身体能力や技術が急に伸びるわけではないから、もしもその部分で劣るなら、一つひとつのプレーの精度を“チームの戦い方”に合わせる形でちょっとずつ上げなきゃいけない。

―― それができれば必然的に個と組織が同時に成長するという流れを作れますよね。

そうです。例えば、1本のパスで相手に対する優位性を作りたいなら、一人ひとりのポジショニングの質をもっと上げて、互いの距離感をその局面ごとに最適なものにしなきゃいけないですよね。それができれば、視野の角度が変わったり、視野が広くなったりする。もちろん昨シーズンからずっとトライしているところではあるんですけど、それをJ1のレベルに合わせる形でもっと改善できれば、選手それぞれの身体能力や技術が急に上がらなくてももっとラクに戦えるようになるというか。

―― わかります。

ボールを持って、動かして、相手を困らせるようなサッカーができると思うんですよね。そこにはまだまだ成長の余地がたくさんあるというか。

前 貴之

―― 浦和戦と川崎F戦でまさにそのことを感じました。ボール保持の局面でこっちが全体的にいいポジションを取って、相手がうまく対応できないというシーンがいくつもあった。それを見てちょっと驚いたんです。「対応できないの? それとも対応しないの?」と。

体感的には、浦和戦と川崎F戦はちょっと感覚が違いました。浦和戦は相手のプレスがぜんぜん連動していなかったと思うんですけど、そのプレスがバラバラであっても、こっちが勝手にビビってうまくボールを前進させられないというシーンが多くて。
でも川崎F戦は僕らのメンタリティーが違ったんですよね。相手がプレスに来てくれたほうがうまく剥がしてボールを前進させられるよという感じで。

―― 「相手をよく見て戦う」という感じで少し余裕があった。

そうそう。だから相手によりますよね。あくまでの「あの試合の」という意味ですけど、川崎Fの守備はあっちの1人がこっちの1人“だけ”を見るという感じだったんです。だからうまくポジショニングできれば間のスペースで受けられるし、そこからパスをつなぐこともできる。あの試合はボニ(久保庭良太)も(河野)貴志も余裕を持ってワカ(若原智哉)を使いながらリターンパスをもらって前を向くということができていたので、それで相手の守備もズルズル下がっていったんです。
逆に浦和は2トップが前からうまく追って、2ボランチもこっちのボランチを完全に消そうとしていたので、そのプレッシャーに負けて蹴らされるシーンが多かったじゃないですか。そういう違いを見極めて、相手がJ1だからと言ってビビらず、逆に相手の力を利用するようなサッカーができれば十分にやれると思うんですよね。

―― その見極めって、チームだけじゃなく“個”に対しても同様ですよね?

もちろんです。浦和戦と川崎F戦で感じたのは、1人でこっちの2人を消すような守備ができる選手がいるチームはやっかいだなと。それって守備面における個の能力の高さだと思うからこそ、自分たちも守備の局面ではそういう意識を持たなきゃいけなくて。全員がそういう意識で守備をやっているチームは、やっぱり強いですよね。

―― 細部の違いはいろいろあるかもしれないけれど、それってまさに現代サッカーにおいてチームとして落とし込まなきゃいけない守備戦術の大原則ですよね。

まさに。今のJ1で言うと、その意識をかなり強く持っていると思うのがEASTなら柏と水戸。WESTならヴィッセル神戸と京都サンガF.C.とサンフレッチェ広島……という感じですかね。もちろん対戦したことがないので細かいところはわからないんですけど。

前 貴之

―― もしかしたら、ある意味ではJ1のほうが戦いやすいという側面もあるのかもしれない。格の違う個は確かに存在するとしても、そういう特徴をうまく利用しながらいかにして勝利につなげるかということを考える必要があるんでしょうね。

うん、本当にそう思います。ついこの間、J1経験の豊富な元チームメートとご飯を食べに行ったんですよ。そこでも似たような話がありました。「ある意味、J1のほうが戦いやすい」みたいな。