
#105
2025.5.20 Update!!
前 貴之
―― ただ、前さんは昨シーズンからそういう話をしていましたよね。ボール保持の局面でのレベルアップをどこかのタイミングで図らなきゃいけないし、これだけ意識の高いチームで、それができれば絶対に強くなれると。
そうですね。いつか細江さんと「それをどうやるか」みたいな話をしたと思うんですけど、まさかJ1でこそチャレンジしがいがあるとは思っていなかったので、そこには自分も驚いているというか。
―― わかります。ところで前さんのポジションって……。
誰にもわかりません。
―― ですよね(笑)。
チーム状況次第という感じだと思うんですけど。
―― そっかそっか。
ただ、ポジションに対する特別な思いは僕自身がまったく持っていないんです。何人かのチームメートにも聞かれたんですけど、そのたびに「これって俺の生き様みたいなもんだから」と答えていて。
―― 面白い。
ユーティリティー性を強みにしている選手って、きっとみんなこういう生き方をしていると思うんですよね。チームとしての戦い方があって、その時々の状況があって、それに応じて任されるべきところを任されるという感じで。でも、それさえわかっていれば、自分としてはあらゆるポジションでプレーする準備ができるというか。だって、俺、プレシーズンは1回もボランチやってないんですよ。
―― それはびっくり。
最初は左右のサイドバックで、ケガ人が出てしまったことでセンターバックをやって、ちばぎんカップの直前に今度はボランチの選手がケガをしてしまったからボランチで出ることになって。でもほら、頭の中にイメージはあっても、やっぱりポジションごとに動き方がぜんぜん違うじゃないですか。
―― 動きが違えば使う筋肉がぜんぜん違いますもんね。
そうですそうです。だから、ある程度は身体が慣れていないとキツいんですよね……実際のところ、めちゃくちゃキツかったですから(笑)。
―― その話を聞くと、ちばぎんカップの意味もちょっと変わってくる気がする。
ですよね。それから、どのポジションでプレーするにしても“誰と組むか”がものすごく大事じゃないですか。自分の場合はそういう意味での意思の疎通もまったくない状態からスタートせざるを得なかったので、それもあって、最初はかなり苦戦しました。でも、だからといってネガティブな感情は一切ないんですよ。だって、それが自分のプロサッカー選手としての生き様だから。
―― カッコいい。
いやいやいや(笑)。自分に対するそういう考え方って、ジェフに来てからかなり強くなりました。今まではほとんどのチームでずっと試合に出ていたけど、昨シーズンはスタメンで出たり、途中で出たり、ベンチから外れたりとかなりの“波”があったじゃないですか。そういう使われ方をするのが初めてだったので、ものすごく勉強になることがたくさんあって。例えば、“クローザー”みたいな形でピッチに送り出されることも、自分の中ではかなりいい経験になったなと。
―― 1試合の中でポジションがコロコロ変わることもありましたよね。
左サイドバックでスタメン出場して、途中でボランチになって、最後にまた左サイドバックに戻るみたいな。でも、「それができる」と評価されているということだと思うので、それは素直に嬉しいですけど。
―― でもその一方で、なかなか自分のサッカー観というか、スタイルを表現できないもどかしさを感じていた時期もあったんじゃないかと思うんです。
それは今でもありますし、むしろそのもどかしさを原動力にしてチャレンジし続けなきゃいけないところだと思います。まず、前提として、何があってもチームとしてのスタイルを貫く(小林)慶行さんのメンタリティーはすごいと思います。そこは本当にすごいと思いつつ、チーム作りの段階によっては自分自身のスタイルが「合っていない」と感じることがあったことも事実で。それでも、監督を信じて、自分自身の“幅”を広げるためにトライできているという意味では、ジェフに来て本当に良かったと思っているんです。だからこそ、自分がやりたいことを表現するというマインドを捨てたくないし、そこにもチャレンジし続けたいとは思っているんですけど。
―― はっきりとしたサッカー観があって、その半分をしっかりとチームにすり合わせながら、もう半分をちゃんと持ち続ける。
うん、そういう感覚ですね。時期によっては自分のサッカー観を完全に捨てるみたいなことも必要だと思うんですよ。完全にチームに寄せてしまう。
いつだったか(田口)泰士くんが言ってくれたんですよね。「俺にも『ボランチなのにそんなとこまで行くの?』とか『そんなことまでやるの?』と思ったことがあった」と。だから自分も、とりあえず全部やってみようと思ったし、まずはそれをやってから自分の良さを出そうというマインドになって。いい時も悪い時もありましたけど、それによって自分の“幅”が広がったことは間違いないので。だから、ここまで自分なりのチャレンジを続けて良かったなと思うんです。