#015
2017.6.28 Update!!
アカデミーダイレクター ホセ マヌエル ララ
―― ジェフはかつて「育成のジェフ」と呼ばれ、トップチームに多くの選手を送り込んできただけでなく、日本代表選手も多く輩出してきました。しかし、近年はそうした流れが停滞しています。ある意味、ホセさんは「育成のジェフ」を取り戻す仕事を任されていると思うのですが、実際にはどのようなことに取り組まれていますか?
ホセ アカデミーを強化する上で最も大切なポイントは、日々のトレーニングの質を上げることです。具体的には、トレーニングの最初から最後まで、ボールを使わないメニューはほぼ行いません。すべてのカテゴリーが同じ方向を向いて、“状況判断を伴うテクニック”のレベルアップを目指しながら、あくまで試合に活かすためのトレーニングをする。それが重要なポイントであると考えています。
―― 各カテゴリーのコーチングスタッフに対して、ダイレクターという立場からどのような指示を与えているのですか?
ホセ 私の役割は“方向性”を示すことであり、すべてのカテゴリーにおける具体的なトレーニングメニューを決めることではありません。私がコーチングスタッフとのコミュニケーションで伝えているのは、トレーニングの構築方法について。具体的にどのようなトレーニングをやるべきかについては、もちろん年齢カテゴリーによって変わります。コーチにもそれぞれの特徴がありますから、彼らの自主性を尊重することも大切です。
―― アカデミーの指導にそうした“統一感”をもたらすことで、どのような選手を育てたいと考えていますか?
ホセ すべてのカテゴリーに共通しているのは、質の高い状況判断ができる選手を育てようとする意識です。ピッチ上にいる自分がどういう状況に置かれているのか、ゲームにおけるどのような場面なのか、それを適切に判断することができ、持っているボールテクニックを発揮することができる。サッカーは特徴の異なる11のポジションで構成されていますし、すべてのポジションで優秀な選手を育てたいと考えています。しかしどのポジションにおいても「質の高い判断力」が求められるという意味において、指導の方法が異なるわけではありません。
―― “ボールテクニック”について、日本の子どもたちは世界と比較しても非常に高いレベルにあると言われています。しかし、ホセさんが言われる「質の高い状況判断」については、課題とする声も聞こえてきます。
ホセ もちろん国民性にも影響していると思います。日本の子どもたちはとても礼儀正しく、コーチの指示をよく聞き、忠実に再現しようとする。それはおそらく、町を歩いているだけでも感じる日本人の気質に由来しているのでしょう。その国の文化や人々の価値観は、間違いなくサッカーにも反映されます。
―― スペインにはスペインの、ブラジルにはブラジルのスタイルがあることが、まさにそれを物語っている。
ホセ そうですね。日本人の礼儀正しく、規律を重んじるキャラクターも間違いなくサッカーに影響していると言えるでしょう。ただ、サッカーでは時に相手をダマしたり、駆け引きに勝つことが必要で、まさにその部分こそがサッカーの魅力であると思います。そういう意味では、ピッチに立てば相手との駆け引きを楽しむ、相手と違うことを“仕掛ける”ことの喜びを伝えたいとも考えています。
―― 決して“テクニック重視”のトレーニングではないということですね。
ホセ もちろん。単純なテクニックが必要であることは間違いありません。しかし、重要なのは組織的なスポーツであるサッカーで、それをどのように応用し、相手との駆け引きを制するための武器とするかです。そのためには、賢さ、つまり状況判断の質を高めなければなりません。