#015
2017.6.28 Update!!
アカデミーダイレクター ホセ マヌエル ララ
―― これまでスペイン、アメリカ、そして日本と3つの国で指導されてきましたが、その国の環境によって指導のスタイルは異なりますか?
ホセ もちろん。国によって文化も習慣も、子どもたちのメンタリティも異なるので、それを考慮しないわけにはいきません。そのことは、特にアメリカでの指導を経験して強く実感しました。
―― というと?
ホセ スペインをはじめヨーロッパ各国では、学校とは関係なく、すべての子どもたちがいわゆる“クラブチーム”でプレーしています。国内には“強さ”ごとにカテゴライズされたリーグ戦があり、強いチームは強いチームと対戦し、大人と同様、上手い選手は他のクラブに引き抜かれ、移籍するというシステムが構築されています。しかしアメリカでは、ほとんどの子どもたちが学校単位の“部活動”に所属し、スペインと比較すれば公式戦の数が圧倒的に少ない。それだけで、環境は大きく異なります。
―― 日本でよく耳にする話として、育成年代において、日本の子どもたちは世界のトップレベルと対戦しても決して引けを取らない。しかし成長するにつれ、世界との差はどんどん広がっていくという課題を指摘する声が多く聞かれます。
ホセ お話したとおり、スペインを含めたヨーロッパ各国には、ジュニアからユースまで競技スポーツとして“勝負にこだわるリーグ戦の文化”が存在します。そのシステムが育成年代の強化にポジティブな影響を及ぼしていることは間違いありません。ニューヨークにはそうした文化がなく、高いレベルの切磋琢磨が抜け落ちていると感じました。ギリギリの緊張感を強いられる環境で、テクニックを表現する場が少ないのです。
―― ほとんどの子どもが学校の部活動でプレーする日本も、アメリカに似た環境であるということですね。
ホセ 環境そのものを変えることは、残念ながら簡単ではありません。ただ、子どもたちはとても素直で、目の前に難しい試合があったり、強い相手がいれば、高いモチベーションを持ってトレーニングに臨みます。だからこそ、私たち指導者は環境に頼らず、そうした雰囲気を作ることが大切です。練習試合か公式戦かにかかわらず、すべての試合に向けて私たちが期待するレベルとテンションで戦うということ。つまり、選手への要求レベルを常に高く維持し続ける。そういう状況を作り上げることはできるはずです。
―― なるほど。
ホセ ニューヨークでは練習試合、つまり子どもたちが“プレーするための試合”がほとんどでした。だから、スペインでは必要のなかった刺激が必要で、私たち指導者はそれを選手たちに提供しなければならなかったのです。それはおそらく日本も同じ。指導者の役割はまさにそこにもあると思いますが、サッカーそのものの本質はどこの国に行っても変わりません。私自身の“サッカー観”を変える必要はないので、どの国に行っても、同じクオリティの指導を提供したいと考えています。