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#101

2025.11.22 Update!!

想いを懸ける。

杉山直宏

“その1試合”がすべて

―― あの時期にひと皮むけたという感覚も?

自分ではどうかわからないですけど、とにかく必死でした。何かをアピールしようなんて思っていなかったし、とにかく自分のために今ここでやらなきゃいけないという思いが強かったというか。そうやって必死に走っていたら、今までの自分ではできなかったプレー、例えば相手の前でボールを奪うシーンがあったり、自分の守備によってコースを限定して、後ろの選手がボールを奪えるというシーンがあって、そこに対する自信がひとつずつ積み重なっていく感覚はありました。

―― それって大きいですよね。

かなり大きかったと思います。「これだ」という感触があったので。

―― で、あの水戸戦(第33節)を迎えるわけですよね。冗談っぽく「オウンゴールでしかジェフ三唱ができない」なんて言っていた人が、自分自身のストーリーを全部つなげてあのゴールを決めた。

いやあ、もう、本当にすごかったですよね。ゴールを決めた瞬間は僕自身が興奮し過ぎてむしろ歓声が耳に入ってこない感じだったんですけど、あとで動画を見返すと本当にとんでもない雰囲気で、それを観て初めて鳥肌が立ちました。

―― あとから鳥肌(笑)

はい(笑)。あの瞬間はみんなにもみくちゃにされて、潰されて、なんなら首を締められているみたいな感覚でめちゃくちゃ苦しかったんですよ。だから何も感じ取れなかったので、動画を観て初めて知ることのほうが多くて。

―― さっきも少し話しましたけど、やっぱりあの切り返しが見事だった。

最初はシュートを打とうと思ったんですけど、相手が向かってきているのは見えていたし、ボールを左足に置いたら食いついてくれるという感覚はずっとあったので。そこで切り返して、シュートは足に当たるだけ。それだけを意識して打った感じだったので、それが良かったと思います。あれを振り抜いていたら上に外れていたと思うので。

―― ああいう感じでの右足でのゴールって……。

実は結構あるんですよ。

―― そっか。だからいざという時にもふっと力を抜けるんですね。

はい。たぶんそうだと思います。感覚はあるというか。むしろ右足のほうが当てることだけに専念できるんですよね。左足だと、扱えるからこそコースを狙おうとか、強く蹴ろうとか思ってしまうので。

―― あのゴールって、自分的にはどんな意味がありました?

そうですね……やっぱり、勝たなきゃいけない試合で、0-0で、アディショナルタイムに自分がゴールを決めて勝つという経験が僕にとっては初めてのことで……だから、今までのゴールの中でも一番、想いが強いゴールというか、今シーズンの自分の立ち位置とか流れも含めて、本当に価値があるゴールになったと思っていて。

―― いろいろなことを全部吹き飛ばすゴールでしたよね。

はい。本当に。

―― ずっとあれを求められてきた中で、でもなかなかあれを決められなかったからこそ、爆発的な喜びがあったんじゃないかなと。

うん、そうですね。ありました。だからこそ、あのゴールをチームとしての結果につなげたいという思いが強くて。

―― なるほど。

「あのゴールから始まった」と言われたいし、だからこそあと2試合、とにかく勝ち切ることで目標を達成したい。そこは本当に、何としても実現したいですよね。

杉山直宏

―― あと2試合。どう戦いますか?

今さら戦術どうこうではなく、もうなんか、その日のためにどれだけ準備できるかということだったり、その試合にどれだけの想いを懸けられるかということの勝負だと思っていて。その気持ちの強さでしかないと自分は思っているんです。熊本でJ2昇格を決めた時も、後先のことなんて何も考えていなくて、とにかくその1試合に勝つことだけを考えることができていたという実感があって、その結果として優勝できたというのがあって。

―― そうですよね。

はい。もう“その1試合”がすべて。それしかないと思います。

―― 今のジェフは、チーム全体としてそういう戦いができるという自信がある?

はい。間違いなく。それがジェフの強さだと思うので。もちろんまずは僕自身がそれを表現できるように頑張ります。