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#049

2020.9.1 Update!!

たとえ歌ってもらえなくても。

堀米勇輝

「原則」と「非原則」のバランス。

―― チームの戦い方としては、群馬戦(第9節)から大きく変わりました。最終ラインを動かしながら“待つ”のではなく“仕掛ける”守備をする。その頃の堀米選手はケガで離脱中だったと思うのですが、どういう話の流れで、ああいうスタイルに変わったんでしょう。

それまでの戦い方としては、外から見ると「ただゴール前に4-4-2が並んでいる」という感じだったと思います。相手のバックパスに対してこまめにラインコントロールするわけでもなく、相手のボールホルダーに対して仕掛ける守備、寄せる守備をしないから、それがなければもちろんラインを押し上げることはできなくて。逆に言えば、上げられないから寄せられない。例えば、東京V戦がそうでしたよね。

―― サッカーではよくある話ですよね。鶏が先か卵が先か、みたいな。

そうです。じゃあ、自分たちの戦い方として何を大事にしなきゃ勝利につながらないのかと言ったら、やっぱりコンパクトさだと思うんですよ。コンパクトじゃないと相手にギャップを突かれて守れないし、ボールを奪っても攻められない。そうなった時に「もう1つラインを上げたい」という話に必然的になりますよね。そこから始まった修正だと思います。

―― 選手主導の修正だったということ?

いや、監督も「ラインを上げろ」といつも言っていたんですけれど、なかなかできない状態が続いていたんです。僕は離脱していた時期だったんですけれど、たぶんあのあたりの調整が少しずつ入って、ディフェンスラインの選手を中心に作っていった。

尹さんの言葉って、いい意味で響きすぎるところがあって。それだけのカリスマ性があるから、「こうだ」と言われたらそれに引っ張られやすいところは間違いなくある。今シーズンのことで言えば、ずっと4-4-2のブロックの作り方を練習してきたから、「引いて構えろ」と言われたわけじゃないのにその形を作ろうとする意識が強すぎて、結果的にはベタ引きみたいになってしまったんですよね。つまり、リーグ再開後しばらく、選手が尹さんの言葉をストレートに受け止めすぎていた時期だった。

ただ、尹さんが「こう」と言って、でもそうじゃない場面ってサッカーだからいっぱいあるじゃないですか。そこは判断しなきゃいけないというところ。その折り合いのバランスが少し崩れていたのかなって、今となっては思うんです。

堀米勇輝

―― つまり尹さんは4-4-2の守り方についてずっと言ってきたけど、「引け」とも「前から行け」とも言っていなかった。

それを選手が「引いて構える」が正解であると勝手に思い込んで、しかも最初にその成功体験があったからそのまま正解になってしまった。でも、実は、尹さんはあそこまでのものを求めていたわけじゃない。

そういう僕自身も、最近になってようやくそのへんの感覚がわかってきたところなんです。尹さんと話をしながら、ちょっとずつ気づいてきたことで。

例えば、サイドの選手のスタートポジションが外にあるとして、でもそこからポジションを崩しちゃいけないわけじゃない。それでも、守備の“正解”に頭がいきすぎてしまうと、「崩しちゃいけない」と思ってしまったりするんですよね。相手を見て判断しなきゃいけないことがたくさんあるのに。

―― 原則は原則として、その枠を外れた選択がないと何も生まれない。

もちろん、それに対しての責任は伴いますけどね。それは当然のことだし、相手があってこそのサッカーなので、言われていることだけやっていてもそれは違う。要求されていることをやりながらのバランス。相手を見ながら。勝つためには大事なのは、そこだと思います。

―― ということは、僕がなんとなく感じているポジティブな要素って、つまりそのバランスを選手たちがちょっとずつ掴み始めているんじゃないかという期待感なのかもしれません。

間違いなく掴み始めていると思います。尹さんは最初からそれを伝えようとしていて、ようやく選手たちが理解し始めた。だから徳島を相手にしてもそれを発揮できた前半だったと思うし、逆に、少し前までだったらボコスカやられていたかもしれません。少しずつだけど、いい方向に行っていると思います。積み上げていく感じで、どんどん整備されていっていることは間違いないので。