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2014.7.1 Update!!
佐藤勇人 × 岡本昌弘
── オシム時代について話を続けましょう。勇人選手いわく「いつもキレてるし、無愛想だし、挨拶もない。練習はめちゃくちゃキツい」というオシムさんが、どのようにして選手たちに受け入れられていったのか。
岡 本いやあ、もう、どうもこうもないですよね。有無を言わさず、「やる」という選択肢しかなかったから。
勇 人罰走させられたのは選手だけじゃなかったからね。通訳もうまく訳せなかったら「走ってこい!」って言われる。他のスタッフもそう。選手たちは、技術的なミスを指摘されるわけじゃないんですよ。オシムさんは集中力が欠けているかどうかを見極めていて、それが欠けていると判断すると「走れ!」と言う。
岡 本しかも、その見極めがめちゃくちゃ正確なんだよね。言われた本人にも思い当たるところがあるから、何も言えない。
勇 人でも俺、何回か納得できなくて言い返したことがあるよ。でも、「違うと思います」って言いに行ったら“倍返し”されるんだよね。背がデカいオシムさんに上からガンガン言われて、最終的には絶対に負ける。あれはもう、めちゃくちゃ強い(笑)。
岡 本理論立てて説明するから、説得力がすごいんだよね。勝てる気がしないもん。
── それでも、何度か挑戦したんですね。ということはつまり、挑戦させてくれる器の大きさもある。
勇 人今思えば、そうですよね。そこがオシムさんのすごいところだと思います。ただ、絶対に勝てない。あの人に勝てるのは奥さんのアシマさんだけですから。
岡 本チームとしての結果も付いてきたし、雰囲気もめちゃくちゃ良かった。それを感じるようになってからは、オシムさんが絶対的に正しいということをみんなが理解しましたね。だって、当時の僕は試合に全く出ていなかったんですけど、そんなことはどうでも良かったですから。「どうでもいい」と言ったらおかしいけど、試合に出るか出ないかは問題じゃなかった。
── そのエピソードがすべてを物語っていますね。
勇 人そうですね。そういう部分は、昔と今をよく知っている僕らが強く感じているところでもあります。
岡 本そう思いますね。もちろん僕だけじゃなく、すべての選手が試合に出ているかどうかは関係なく一生懸命にやっていました。「やってやる!」という雰囲気をみんなが持っていたし、だからこそ、練習が楽しくて仕方なかった。