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2023.01.08 レディース

ジェフユナイテッド市原・千葉レディース猿澤真治監督 退任に際して

2020年1月、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの監督に就任しました。前年の試合を10試合ぐらい映像で見て、ジェフのサッカーを自分なりに分析し、プレーコンセプトを作成し、選手に対してミーティングで「今までのサッカーの質をより高めて前に進んでいきたい」と話したことが懐かしいです。
ここまで、コンセプトや目指す方向性は変えずに前に進んできました。またこの時に、選手たちにはそれぞれ目標をしっかり持って上を目指してほしいことも伝えました。なでしこジャパン、未来のWEリーグ監督、クラブGMと個人の目標に向けて成長していこう。このことは3年間チームの勝利よりも優先してきたかもしれません。その為、背伸びしすぎたスタートで失敗もありましたが、成長しなくていい勝ち方は求めて来ませんでした。個人の成長が最終的にチームの成長につながると考えています。まだまだ成長できる選手たちこれからの個人・チームの活躍が楽しみです。

監督就任時は、判断のスピードが遅かったり、プレーの選択肢が少ない選手が多く、パターンでプレーをしていて試合が成り立たないなと感じました。そして、多くの選手がそのことに気付いていなかった。私の中では「観ること」「考えること」「判断すること」「動くこと」がサッカーの当たり前だったのですが、うまく表現できない選手たちに厳しく言っていたことを反省しています。
一方で、ジェフ千葉レディースには良い意味で守備力と走力が備わっていました。守備力の中には我慢して守り続けることが出来るメンタルも含まれています。ジェフ千葉レディースの良さであり強さだと思います。今のチームに足りないのはこの部分です。大事に持っていたものがチームの成長と共に薄れていっているのは私の責任です。 また、私はサッカー指導者としてゲームコンセプトを大切にしています。サッカーの試合をするうえで当たり前に必要なことだと思っていて、試合前は何回も繰り返し選手に伝えていました。その中でプロチームとしてのクオリティを求め、見ている人たちに感動を与えようと鼓舞してきました。すべての試合ではないですがホームゲームで感動を与える試合が出来たと思っています。

〇ゲームコンセプト
・走る
┗ 相手よりも最後まで走る。
・アグレッシブに闘う
┗球際で負けない。 1対1で負けない。(ON OFF)
・前へ
┗守備でも攻撃でも前方向を強く意識する。
・ハードワーク
┗勝負の5分で勝つ!全員が最後まで闘い続ける。
・集中
┗勝負は細部で決まる。スキを見せるな!
【 一歩目で相手に遅れるな 予測 】
【 何でもないミスをするな ダメなものはダメ 】
【 声を出せば済むなら、必ず声を出す! 】
【 さぼらずにポジションを取り続ける 】
・思考する
┗相手を分析して攻撃・守備ができる
【 攻撃 相手が守ってないところ スキをつく やり方 】
【 守備 相手に考える時間をあたえない 連動 同時 】


2020なでしこリーグはコロナの感染拡大で開幕が延期になり、どうすればいいのかスタッフと共に考えた答えが、良い準備をして開幕してから怪我をさせないことでした。そこからの2シーズンは怪我人が少なくシーズンを戦うことが出来ました。シーズンがスタートし、守備力と走力で良い戦いができていましたが、前半戦は本当に勝ち切れず、もがいていました。
ほとんどの試合で相手チームよりもシュート数は上回っていましたが、点が入らない。シーズン途中で流れを変えようとシステムを変更し、ビルドアップにチャレンジして、自分たちでボールを動かして攻撃していく。元々はできなかった選手たちでしたが、トレーニングではかなり手応えがあり、チームが前に進んでいく方がいいと考えて3バックに変更しました。
今でもそうだと思いますが、歯車がかみ合って勝ち始めると勢いが出るのがジェフ千葉レディースで、終わってみると後半戦だけなら3位のポイント(年間6位)を稼いでいました。

また、監督に就任してから並行して行っていたのは、ジェフ千葉レディースの言語化です。ぶれないチームの方向性と良さを引き継いでいくために時間もかけて作成しました。そして、レディースのプロ化を目指して2021年開幕までに、チームスタッフ、OGなど多くの方に関わっていただき、みんなでジェフ千葉レディースのチームフィロソフィー(大切にしていくこと)と今までのジェフ千葉レディースのプレースタイルを言語化して、目指す方向をより明確にしました。これに私が作成したプレーコンセプトを加え、2021-22シーズンはチームの方向性も明確にしてスタートすることが出来ました。

〇フィロソフィー
・魅せる【スポーツで手をつなぐ】
・ひたむき
・伝承
〇プレースタイル
「 走る ! 闘う !」



2021-22シーズンは私自身がプロクラブとして何かを変えなければ、と力が入りすぎていたスタートでした。システムも3バックと4バックを併用しようと考えたし、攻撃のバリエーションも増やそうとしましたが、シンプルに自分たちのサッカーをやり続ければ良かったと思っています。
開幕3試合で勝ち点1になり自分たちのサッカーに重心を変えて戦うようになってからは連勝し、終わってみれば4位、皇后杯も決勝まで勝ち進むことができ、チームが大きく前進してくれました。やればできる。そう思えたシーズンでした。

2022-23シーズンスタートに向けて、前を走っているチームの背中が見えてきて、INAC神戸レオネッサ、三菱重工浦和レッズレディース、日テレ・東京ヴェルディベレーザに代わるチームになることを意識して、シーズンをスタートさせました。
強いチームになるために必要だと思うことを基準データで示しました。2021-22シーズンは、リーグ全体1位のパスカット、全体2位のデュエル勝率は守備の要素として評価されたと思っています。ただ、強いチームの特長は、相手コートで自由を奪い、ボールを奪ってゴールを決めるプレス強度の指標である「PPDA」の順位を上げようとスタートしましたが、設定を高くしすぎて、選手たちに要らないプレッシャーをかけてしまったと思います。求められるものが多くなりすぎて、選手のモチベーションが下がってしまったのもあると思います。また、結果が良い方に出ていれば強いチームになって行ったかもしれません。選手たちが持てる力を発揮すれば実力はあると思っています。監督も選手も力不足でした。

2022-23シーズンスタート前に林選手と千葉選手の2名がなでしこジャパンに選出され、代表活動に参加して試合にも出場しました。しっかりとリーグで結果を出して代表に呼ばれたことは、ジェフ千葉レディースとしても素晴らしいことです。2020年のスタート時点で求めた夢が少し現実になった瞬間でもありました。
ただ、現実は厳しく、残念な怪我で今はリハビリ中です。でも、夢をあきらめたわけでもないし、2人もそうですが別の選手もこれから大きく活躍してくれると信じでいます。良い選手はどんな環境でも自分自身の力で成長を遂げ、活躍してくれると私は考えています。私が去ることでもっといい環境に変わると思うので今まで以上に頑張ってください。

最後に
ここまでサポートして頂きWEリーグの立ち上げにご尽力いただいたスポンサー・クラブスタッフの皆様本当にありがとうございました。共に戦ってくれたサポーター、私自身は良い意味でサポーターの反応はすごく気にしていました。遠いアウェイの試合まで足を運んで応援してもらえることは喜びでした。正直、皇后杯の敗戦は全く期待に応えられない内容で情けない気持ちでいっぱいでした。
これから、選手たちが今まで以上に頑張ってジェフ千葉レディースらしい試合を見せてくれるはずです。これからはサポーターと一緒に応援させてもらえればと思っています。ありがとうございました。
 
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
監督 猿澤真治

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